2017 Fiscal Year Research-status Report
難治性がん克服に向けた転写リプログラミング核酸医薬創成コンセプトの確立
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17K19475
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
降幡 知巳 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (80401008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋田 英万 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (80344472)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | がん分子標的治療 / 核酸医薬 / ドラッグデリバリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、がん細胞特異的遺伝子産物cancer-type organic anion transporting polypeptide 1B3 (Ct-OATP1B3) を標的とした転写リプログラミング核酸医薬の創成コンセプトの確立を目指しており、当該年度は本核酸医薬の有効性実証とそのがん細胞送達に向けたナノ粒子の開発に取り組んだ。 まず、Ct-OATP1B3を標的とする核酸医薬を作成し、Ct-OATP1B3陽性がん細胞に導入した。これを播種した担がんマウスを用いてCt-OATP1B3標的核酸医薬の効果を解析したところ、本核酸医薬はがんの成長を著しく阻害することが明らかとなった。また、この時がん組織では多数のアポトーシスが誘導されていることが明らかとなった。したがって、Ct-OATP1B3標的転写リプログラミング核酸医薬は優れたがん治療効果を有すると考えらる。 一方、本核酸医薬をがんへ送達させるためにssPalm(ドラッグデリバリーシステム構築用中性脂質)を用いたナノ粒子開発も行った。構造の異なるssPalmを用い、ルシフェラーゼをレポーターとしてがん細胞への導入効率を検討したところ、特定の脂肪酸とアミン構造を持つssPalmを用いたナノ粒子において、最も高いがん細胞への遺伝子導入効率が認められた。これは最新の市販の遺伝子導入試薬よりも高い値であり、本ナノ粒子は、がん細胞への優れた遺伝子導入効率を有すると考えられた。 以上、当該年度の研究により、Ct-OATP1B3標的核酸医薬の抗がん効果が明らかとなり、それをがん細胞へと送達させるための基本ナノ粒子組成を見出した。次年度以降、Ct-OATP1B3標的核酸医薬をナノ粒子に搭載し、その治療効果をin vitroおよびin vivoで検証していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のとおり、当該年度の研究により、Ct-OATP1B3標的核酸医薬の抗がん効果が明らかとなり、それをがん細胞へと送達させるための基本ナノ粒子組成を見出した。前者については、論文としてまとめており、次年度に公開される見込みである。このように概ね期待される成果が得られたため、(2)おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Ct-OATP1B3標的核酸医薬をナノ粒子に搭載し、その治療効果をin vitroおよびin vivoで検証していく予定である。 また、in vivoにおける核酸医薬の検証前に、ナノ粒子の体内動態挙動を解析する必要がある。このため、ナノ粒子自体への蛍光ラベルまたはナノ粒子へレポーター遺伝子を搭載し、担がんマウスにおけるその体内動態(血中滞留性やがん組織への集積性)を明らかとする。その経時的変化をもとに投与回数・投与量を決定し、Ct-OATP1B3標的核酸医薬を用いた検討に移る。これまで用いてきた大腸がんモデルに対して効果が認められた場合には、食道がんやグリオーマなど、がん種を広げて検討をおこなう。 これらの解析を通じて、Ct-OATP1B3標的核酸医薬の創成コンセプトの確立を進め、同時に実用化に向けた課題もあぶりだしていく予定である。
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