2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of deep phenotyping method that enables analysis and application of latent drug response
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17K19478
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
楠原 洋之 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00302612)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | オミクスデータ / トランスクリプトーム / プロファイルデータ / OLSA |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物応答性をオミクスデータに変換した後に学習無しの解析を行うことで、研究者が必ずしも定義していない表現型をも利用して薬物応答性を体系的に捉える方法論を構築している。本研究では、本方法論による薬物作用の体系化を実証するため、抗がん剤の併用効果の予測に取り組む。これまでに当研究室では、学習無しの解析手法として因子分析主成分法を応用することでオミクスデータを線形分離し、次元縮約するアプローチを考案しており、薬剤を処理した際のオミクスデータに対して本法による解析を適用した。オミクスデータとしては公共データベースが充実しているトランスクリプトームデータを用いた。Broad instituteが提供するConnectivity mapによるMCF7細胞に対して318化合物、370条件のトランスクリプトームデータを解析に供したところ、1サンプルにつき11911遺伝子 (次元) からなるデータが118個のベクトル (次元) に縮約された。これらは遺伝子の協奏性により縮約されているものと考えられるため、各々が何らかの薬剤作用に応答して変動した遺伝子パターン (シグネチャー) であると推察される。実際に個々のシグネチャーにおいて寄与率の高い遺伝子群 (上位1%, 119遺伝子) をgene ontology解析した結果、65個のベクトル (55.1%) に関して有意な濃縮が認められ、確かに薬物作用を細胞において意味のある情報に縮約することに成功した。オミクスデータの取得に関してはプロテアソーム阻害剤であるMG132, BortezomibなどをHeLa細胞に施し、二次元電気泳動による解析を行うことで本系による薬物作用の分離性能を評価した。得られたデータを上述の解析手法により線形分離したところ、これら類似の作用を持つ薬剤の作用を分離するスポットパターンを見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロファイルデータの取得方法論である二次元電気泳動がやや遅延している。原因の一つとして実験者による手技の習得に時間を要する点が挙げられる。この点は本年度の研鑽により解決に向かっているものの、引き続きデータ取得に邁進する必要がある。また現状では薬物作用を分離したに過ぎず、この分離の汎化性能を検証する必要がある点には注意する必要があることも付け加えたい。一方、データ解析手法の薬物作用分離への適用は順調に進んでいる。プロファイルデータ取得の遅延とデータ解析手法の前進とを総合的に考慮し、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロファイルデータの取得方法である二次元電気泳動に関してやや遅れが生じている。この原因の一つとして、実験難易度の高さからくる実験手技の安定性が従事者間で異なる点が挙げられる。現在実験手技習熟に取り組んでおり、実際に再現の良いスポットの検出に成功しつつあるものの、二次元電気泳動データの質と安定性の向上にこれからも努める必要がある。二次元電気泳動のメリットとして翻訳後修飾の情報も利用することが可能な点が挙げられる。しかしながら当研究室で開発したプロファイルデータ解析手法 (Orthogonal Linear Separation Analysis, OLSA) は、薬剤処理をした細胞のトランスクリプトームデータにおいても機能することが本年度の成果より明らかとなった。そこで今後は二次元電気泳動によるデータ取得・解析に平行して、トランスクリプトームデータの取得・活用することでも抗がん剤の併用効果の予測に取り組み、研究者が必ずしも定義していない表現型をも利用して薬物応答性を体系的に捉える方法論の実証を遂行したいと考えている。
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Causes of Carryover |
プロファイルデータの取得方法論である二次元電気泳動が、実験者による手技の習得に時間を要しているためやや遅延した。その結果、電気泳動にかけるサンプル処理、および電気泳動に供する費用が当初予定よりも、減少した。本年度、当初目標を達成するため、マンパワーを確保して実験に取り組む。
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