2020 Fiscal Year Research-status Report
経頭蓋非侵襲光刺激を可能とする光遺伝学ツールの探索
Project/Area Number |
17K19630
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
冨岡 寛顕 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50212072)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 光遺伝学 / 脳科学 / 微生物型ロドプシン / イオンポンプ / イオンチャネル / 光受容蛋白質 / 膜電位 / イオン輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
2005年に開発されるや瞬く間に全世界に広がり、現在では当たり前の技術となっている光遺伝学は神経細胞を光により操作するというものである。しかしながらその技術は未だ発展途上である。この光遺伝学をさらに進めるためには、その方法の根幹をなす光感受性の蛋白質(ツール)の開発研究が重要である。光遺伝学の最初の論文では青色光により開口し、陽イオンを透過させるチャネルロドプシン2という緑藻クラミドモナス由来の微生物型ロドプシンがツールとして用いられた。その後も光遺伝学では種々の微生物型ロドプシンが用いられ、吸収の長波長化、光反応時間短縮、光感受性向上、発現量上昇、膜移行量の向上が新規ロドプシン探索や変異体作成により図られてきた。本研究は、新規のツールになりうる微生物型ロドプシンを求めて自然界を探索するというものである。地球上の極限環境の一つである高塩濃度環境から有望な株は未だ得られていない。この研究過程であまり着目されてこなかった極限環境から新規のツールを得られる可能性があることを示唆するデータを得たので、その極限環境の候補地を絞り込み試料採取に成功した。有色の有望コロニーを3個得て、ゲノム解析を試みた。内2株はゲノム解析に成功した。得られた塩基配列情報から含まれる微生物型ロドプシンと推測されるアミノ酸配列を求めたところ既報のものとは異なるが、期待できるような新規性はなかったが、ゲノム解析までは成就したのでこの経験を活かして残りの期間で何とか目的達成を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響を強く受け、残念ながら高塩濃度環境からは候補となる株はまだ得られていないが今後も継続する。一方、コロナ禍の中であったが、一度試料採取に成功し、異なる極限環境から有望株を三株得た。古典的な手法ではあるが、純粋培養により得たそれら三株の遺伝子解析を行った。一株は、菌体が多量に持つ色素の影響で満足いく状態でのDNA試料が得られず塩基配列解読はできなかった。残りの二株はゲノム配列決定に好適な状態でDNA試料を得ることに成功し、ゲノム解読は成功した。各株とも微生物型ロドプシンと考えられる遺伝子を各々一つ有していた。既報のものとは異なるタイプであったが、両者とも推測される機能はプロトンポンプであり、残念ながら長波長シフトは期待できないものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
塩濃度の高い極限環境からの新規の微生物の単離は粘り強く継続し、有望な別の極限環境の探索をさらに進め、新規のツールに結び付くような蛋白質のアミノ酸配列の情報を得たい。コロナ禍により探索活動は困難を伴うが何とか最低一度でも試料取得を行うことを目指して進めていく。
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Causes of Carryover |
この研究は代表者が一人で進めている研究であるが、卒論や修論と関連する作業部分などは学部学生と大学院生にも手伝ってもらっていた。ここ数年の傾向であるが院生も含めた学生の学力及び意欲の低下が著しく、作業の信頼性の確保のための付き添い見守り時間の増加、一般授業の質疑応答などに費やす時間の増加もあり、研究の進行が遅くなるのに加えて、コロナ禍によりさらなる遅延が生じ研究費の残額も出てしまった。今年度は初めての試みとしてゲノム解析の受託サービスを活用し、そこそこ良好な結果を得たので、今後も適宜受託サービスなどを利用するなどして進めたい。
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