2017 Fiscal Year Research-status Report
Novel therapeutic strategies for amyotrophic lateral sclerosis using human deciduous dental pulp stem cells and their active ingredients
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17K19666
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
保住 功 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20242430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 尚佳 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (00746315)
柴田 敏之 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50226172)
山本 朗仁 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (50244083)
神志那 弘明 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50506847)
位田 雅俊 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (70512424)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / ヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清 / Cu/Zn SOD (SOD1) / 凝集体 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症 (ALS)に対するヒト乳歯歯髄幹細胞培養上清 (Stem cells from human exfoliated deciduous teeth-conditioned medium; SHED-CM) の効果について検討した。ALSは上位と下位の運動ニューロンの選択的な変性を特徴とする進行性の神経変性疾患で、5~10%が家族性、大部分は弧発性であり、1993年に家族ALSの原因遺伝子として変異Cu/Zn superoxide dismutase(SOD1)が初めて同定された。野生型のSOD1が安定したhomodimerを形成するのに対して、変異SOD1は3次構造に異常を来たし、不溶性の凝集体を形成し、細胞内に蓄積して、やがて神経細胞障害を引き起こすことが知られている。今年度は、SHED-CMの異常タンパク質の蓄積の抑制効果を検討した。変異SOD1が蓄積するモデル細胞(A2a細胞)を作製した。蓄積モデル細胞にSHED-CMを処置し、共焦点レーザー顕微鏡にて細胞内の凝集体を観察し、また、Western blot法を用いて不溶性の異常タンパク質蓄積を検討し、統計解析を行った。結果は、変異SOD1を導入した群に関しては細胞内凝集体の有意な増加を確認した一方で、SHED-CM処置群では、細胞内凝集体が無処置群に比べ有意に減少していた。Western blot法では、1% triton Xに溶けなかった不溶性のものをinsoluble分画とし評価した。変異SOD1を導入した群に関してはそれらの不溶性の異常タンパク質が増加しているのに対し、SHED-CM処置群では、それらが有意に減少していた。以上より、SHED-CMは変異SOD1由来の不溶性異常タンパク質に対し蓄積抑制効果を有することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変異SOD1由来の不溶性異常タンパクが凝集するモデル細胞(A2a細胞)を作製した。その凝集抑制にブラジル産緑プロポリス、その成分であるケンフェロール (kaemperol)が有効あることを英文誌に報告した(Sci Rep 2017)。我々はさらに、弧発例でも報告されているTAR DNA-binding protein 43 kDa(TDP-43)の異常蓄積に対するSHED-CMの効果の検討も行っている。また、A2a細胞だけでなく、運動ニューロン様NSC-34細胞でも検討を行う予定である。SHED-CMの成分として含まれる肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor; HGF)には運動神経保護効果が認められている。また、SHED-CMが持つ多面的な作用の一つであるM1ミクログリアをM2ミクログリアへ移行させる作用についても検討する。この作用には、SHED-CMの成分である、抗炎症性M2様マクロファージ(anti-inflammatory M2-like macrophages)作用を有する単球化学誘導蛋白-1 (monocyte chemoattractant protein-1; MCP-1) とシアル酸結合免疫グロブリン様レクチン-9の分泌外部領域(the secreted ectodomain of sialic acid-binding Ig-like lectin-9; ED-Siglec-9)の共同作用が重要であることが脊髄損傷モデルラットの検索から見出されている。ALSのモデル細胞系においてもこれらの各有効成分の確認を行う。我々のこれまで観察から、SHED-CMの働きは、HGFより、MCP-1とED-Siglec-9の共同作用による傷害運動ニューロンの周囲の環境の改善がより重要であると推測している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、in vitroの細胞系においてSHED-CMの効果、作用機序の解明を行っている。A2a細胞、運動ニューロン様NSC-34細胞などの市販の培養細胞だけでなく、ヒトALS患者由来のiPS細胞を用いた実験系でもその検証も行う。In vitrpの細胞系だけの実験ではなく、ALSモデルマウス、ラットさらにはALSモデル犬などを活用し、ALSの創薬としての有効性、作用機序の解明を行う。特にSHED-CMの働きはHGFより、MCP-1とED-Siglec-9の共同作用による傷害運動ニューロンの周囲の環境の改善がより重要であると考えている。ALSのモデル細胞系においても、これらの有効成分を抜いたSHED-CMを用いて、これらの各有効成分の作用の確認を行う。また、環境改善の証明には動物モデルでの検索がより重要であると考える。SHED-CMの投与法に関しては、持続注入ポンプを活用し、髄腔内にSHED-CMを持続的に注入できる方法などの検討を行う。有効成分の安定したSHED-CMが供給できるシステムを開発する。SHED-CMの有効成分の同定は、iTRAQ法による網羅的なタンパク質の発現解析法などを用いる。そして有効成分の安定したSHED-CMが供給できるシステムを開発する。臨床に、早期にヒトALS患者に使用できる創薬開発を目指して、前臨床研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
1500円は機器使用料が次年度の請求があるため、繰越金が生じた。
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Research Products
(2 results)