2020 Fiscal Year Research-status Report
保健医療行政における計画策定方法とプログラム評価手法の確立に関する研究
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17K19835
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
刈谷 剛 高知工科大学, 地域連携機構, 客員研究員 (00583519)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 介護予防 / 要介護認定 / AI / ディープラーニング / プログラム評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究年度は、AIによるディープラーニングを行い介護予防の対象者を選定するため、共同研究自治体から提供された第7期介護予防・日常生活圏域ニーズ調査票の結果データと要介護認定調査データを活用し、まずニーズ調査結果の回答後に、要支援・要介護状態となった被保険者の特徴を分析・評価した。 この結果、身体的活動の視点から、ニーズ調査に回答後、要支援・要介護状態となった人の約54%は、階段をつたわらないと昇れない。要支援・要介護と判定された人の約76%はなんらかの転倒への不安を抱えている(不安は抱えているが転倒経験が多い人は少ない)。ニーズ調査後に要支援・要介護と判定された人の約6割以上が、物忘れが多いと感じている。また、健康状態の観点から、要支援・要介護と認定された人の9割以上がなんらかの疾病を抱えており、医療機関に通院している。要支援・要介護と認定された人の23%しか、1回30分以上の運動を行っていないことがわかった。 次に、第7期ニーズ調査後に要支援1・2及び要介護1から3までの状態に陥った被保険者の特徴分析を、要介護認定調査結果のデータを基に行った。身体機能の中でも麻痺等の有無について、左下肢、右下肢に麻痺がある者が多く、上肢よりも下肢に麻痺があることがわかった。また、生活機能の質問項目においては、約8割以上ができるが、介助されていない状態にあるものの衣服の着脱(上着、ズボン)に関し介助されていないと判断された人は、7割程度に留まることが判明した。さらに社会生活への適応項目においては、集団への不適応以外、自立できていない、あるいは、一部介助、全介助の状態にあり、社会生活への適応力がかなり低いことが判明した。特に、約92%が日常に意思決定ができない状態にあり、自分で買い物ができる人は約2割しかいないことがわかった。こうした分析結果は、ディープラーニング時の特徴量の判断に有益である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の計画の最終的な目標、すなわち保健医療行政における計画策定方法とプログラム評価手法の確立という目標自体に変更はないが、そのシステム構築に至る研究手法の一部をAIによるディープラーニングを用いた研究手法に変更したことで進捗に遅れが生じている。 これまで、医療給付費や介護給付費の将来的な予測を踏まえたシステムダイナミックスによるシステムを自治体内に構築することを研究主眼としてきたが、これまでの研究期間で問題構造化→システム思考に基づく因果フローダイアグラム→ロジックモデルの構築を行う中、システム内の変数である要支援・要介護者(数)の減少や介護給付費の抑制のためには、介護予防という変数が必要不可欠であり、将来的に自治体の保険財政を健全化するためには、被保険者が要介護状態とならないような施策・事業づくりが求められる。よって、生活習慣病の予防に関し、特定健康診査の受診率及び特定保健指導の実施率が向上しない原因を分析・評価した後、自治体が保有する介護予防・日常生活圏域ニーズ調査票の結果データと要介護認定調査データを活用し、自立状態から要介護状態となった人の特徴を分析・評価することが急務であると考えた。 それゆえ、共同研究自治体の介護予防・日常生活圏域ニーズ調査結果と要介護認定結果を活用することで、将来的に要介護状態に陥る可能性がある被保険者の「特徴量」を判断する必要性が生じた。 当該年度までの進捗状況としては、協力自治体とともに、特定健康診査の受診率を向上させるため、被保険者とワークショップを通して問題構造化を実施し、その問題構造化からロジックモデルを構築、そのロジックモデルに基づくアンケート調査を実施し、結果を分析・評価している。加えて、特定健康診査の受診時に特定保健指導の該当となった者、過去に該当していた者の協力により、特定保健指導の実施率が低い要因について問題構造化を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
保健医療行政における計画策定方法とプログラム評価手法の確立のため、自治体が保有する保健情報(健診結果データ、医療レセプト)、介護データ(要介護認定データ、介護レセプト)、そして介護予防・日常生活圏域ニーズ調査票の結果データを基にAIによるディープラーニングを行い、将来的に要介護状態になりそうな被保険者を抽出し、介護予防事業を企画・立案する。このことは、自治体内の各部署で保管されている被保険者に関するデータを一元管理することに繋がることから、被保険者の生涯において保健から介護に至るまでのプロセスを計画し評価することを可能にする。 そのため、まず、共同研究自治体の第8期介護予防・日常生活圏域ニーズ調査票結果及び過去の医療レセプトの結果をさらに分析・評価することで、ディープラーニング前の特徴量の評価を行う。 次に、これまでに分析したデータを基に、AIによるディープラーニングを行い、要介護状態になりそうな被保険者を選定後、その被保険者の特徴を踏まえた介護予防に関する事業を企画する。AIによるディープラーニングを行う上で課題となるのは、入力したデータと正解データとの相違(誤差)を効果的な学習により少なくする必要があるため時間を要することだと考える。加えて、介護予防に関する適切な特徴量を見つけるため、どのフレームワーク(アルゴリズム)が良いのか評価をしなければならないことも課題と考える。 それゆえ、できる限り速やかにディープラーニングのための基本的な構造を構築する必要がある。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により、研究協力自治体及び当該被保険者との接触が困難であったことから、保健分野における疾病予防に関し、研究協力自治体に在住している被保険者に対する特定保健指導への参加・不参加の要因分析のための調査にかかる若干の郵送費用等が必要となっている。 また、本研究では、AIによるディープラーニングを行ったプログラム評価手法へと当初の研究計画から変更を行ったため、ディープラーニングのシステムに関する構築費用(使用PCに対するGPUの強化)、各種データの提供元の自治体や介護予防事業の企画・立案・実施を行う事業者とのミーティングに伴う費用、さらには既存統計手法(生存時間分析など)も並行して検証することも予定しているため、分析ソフト代を次年度必要経費として計上する。そして、コロナウイルスの影響により県外への移動が困難な状況になければ、本研究に関連する学会へ参加するための旅費を必要経費として計上する。
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