2018 Fiscal Year Research-status Report
口腔機能向上効果プログラムが有する大脳認知機能局在部位との機能的結合の探索的解析
Project/Area Number |
17K19858
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Research Institution | Fukuoka College of Health Sciences |
Principal Investigator |
力丸 哲也 福岡医療短期大学, 歯科衛生学科, 教授 (10299589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大倉 義文 一般財団法人ファジィシステム研究所, 研究部, 主席研究員 (80352293)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 認知機能 / 口腔機能向上プログラム / 大脳前頭前野 / 近赤外線分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、介護予防や歯科診療の臨床現場で口腔機能向上機能訓練法として実施されている口腔機能向上プログラムの中から、①口腔関連プログラムにより活性化される大脳前頭前野の機能局在部位の変化に関する知見の詳細について再検討することで、認知機能の向上効果を有するプログラム課題候補を選定するとともに、②それらのプログラム課題候補の遂行に伴う認知機能の変容について、認知・学習機能に関連する大脳機能局在部位の活性化と認知機能・学習効率の変化との関連性を明らかにすることを目的としている。 本研究期間の2年目である平成30年度には、近赤外線分光法(NIRS)を用い、主にA)舌圧強化の支援グッズやB)口唇閉鎖力強化の支援グッズを用いたプログラム課題を遂行し、大脳前頭前野の認知機能局在部位の活性化の機序の解析を進めた。 A)舌圧強化の支援グッズを用いたプログラム課題では、大脳前頭前野の活性化を示す傾向は認められたものの、舌圧強化の強度に対応した大脳前頭前野の活性化の有意な増大(広義の「用量反応関係」)は認められなかった。 B)口唇閉鎖力強化の支援グッズを用いたプログラム課題では、A)舌圧強化の支援グッズを用いたプログラム課題に比べ、大脳前頭前野の活性化を示す所見が強く認められ、さらに、口唇閉鎖力の強度に対応した認知・学習機能に関連する大脳機能局在部位の活性化の変化の増加が見出された。 新たに見出されたこれらの大脳前頭前野の活性化に関する知見から、舌圧強化に関連する口腔機能向上プログラムよりも、口唇閉鎖力強化に関連するプログラム課題の方が認知機能の向上を期待できる課題プログラム候補となり得る可能性が見出された。また、3ヶ月間の口腔ケアプログラムに伴う血液中の認知機能関連因子の変化を探索する臨床介入研究も実施しており、統合的な大脳認知機能の探索的解析としての研究を並行して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成29年度に実施した、ぶくぶくうがい(頬部の膨らませ運動)、タンギング(舌打ち運動)、構音機能訓練(「パ・タ・カ・ラ」の発音)のプログラム課題の遂行において、有意な大脳前頭前野の活性化が見出されなかったことから、頬部・舌・発音や発語等の運動を中心とした口腔機能向上プログラム課題では有意な大脳前頭前野の活性化効果が得られないことが確認できていた。それを受け、平成30年度はA)舌圧とB)口唇閉鎖力に関連する口腔機能向上プログラムを中心に検討し、それぞれのプログラム課題における大脳前頭前野の活性化の特徴を解析することができた。 さらに、3ヶ月間の口腔ケアプログラムに伴う認知機能の評価指標と血液中の認知機能関連因子の変化を探索する臨床介入研究も実施しており、統合的な大脳認知機能の探索的な研究を並行して行っている。また、口腔ケアプログラムとしての口腔内寒冷刺激に伴う大脳前頭前野の活性化効果について、原著論文として取り纏めることができており、研究活動はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究成果として得られた、A)舌圧とB)口唇閉鎖力に関連する口腔機能向上プログラム課題について再検証を行い、今後の認知機能の変容を検討する際の課題プログラム候補として活用していくとともに、原著論文の執筆に向けて統計学的解析を進めていきたい。さらに、3ヶ月間の口腔ケアプログラムに伴う血液中の認知機能関連因子の変化に関する臨床介入研究を継続実施することで、改訂長谷川式簡易知能評価やMMSE(Mini Mental State Examination)等の評価指標を用いた認知機能の変容の解析とともに、血液中の認知機能関連因子の変化についても検討することで、統合的な大脳認知機能の探索的研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
平成30年度に実施したA)舌圧とB)口唇閉鎖力に関する口腔機能向上プログラムの検討により、舌運動と口唇閉鎖運動それぞれのプログラム課題における大脳前頭前野の活性化の特性を見出すことができた。また、前述の口腔機能向上プログラム課題による認知機能の変容に関する検討とともに、3ヶ月間の実施期間の口腔ケアプログラムに伴う改訂長谷川式簡易知能評価やMMSE(Mini Mental State Examination)等の認知機能評価指標を用いた認知機能の変容の解析や、血液中の認知機能関連因子の変化についても検討を進めることができた。それに伴う新たな研究の方向性の検討を進めたために、未使用額が生じた。 次年度の実施計画としては、舌圧や口唇閉鎖力に関連する口腔機能向上プログラム課題の再検証とともに、原著論文の執筆に向けた統計学的解析を進めていく。また、3ヶ月間の口腔ケアプログラムに関する臨床介入研究を継続実施し、改訂長谷川式簡易知能評価やMMSE(Mini Mental State Examination)等の認知機能の評価指標の解析とともに、血液中の認知機能関連因子の変化についても検討することで、統合的な大脳認知機能の探索的研究を進めていく予定である。
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