2017 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病における脂質代謝異常による筋萎縮発生機序の解明
Project/Area Number |
17K19910
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
増田 真志 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 助教 (50754488)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹谷 豊 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (30263825)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 慢性腎臓病 / 筋萎縮 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)に併発するProtein-energy wasting syndrome(CKD-PEW)は、筋肉や脂肪の蓄積が減少する。健常者ではBMI値の高値は生活習慣病などの罹患率が高くなるが、CKDの透析患者ではBMI値と致死率には負の相関関係がある。オートファジーは、細胞が自らの細胞内タンパク質を分解する主要メカニズムで飢餓時の栄養源確保だけでなく、細胞内の異常タンパク質の蓄積を防ぐことで生体の恒常性維持に寄与しており、オートファジー障害は様々な疾患に関わる。本研究は、筋肉中の脂質代謝異常によるオートファジー障害を介したCKD-PEW発症機序を解明し、CKD-PEWなどの筋萎縮の新規治療法開発のための研究基盤の確立を目指すものである。初年度の研究で明らかにしたことを以下に示す。8週齢雄性Wistar ratにアデニン食を6週間与えてCKDモデルラットを作製し、その後5週間通常食で飼育した。Normal群と比してCKD群の腓腹筋は、筋重量の減少および筋線維の萎縮が確認された。腓腹筋の脂肪酸組成を解析した結果、CKD群の腓腹筋の不飽和化指数は低下し、SCD mRNA発現量もCKD群で低下した。また、小胞体ストレス応答(BiP、ATF4、CHOP)および筋分解系に関連する遺伝子 (Atrogin1、MuRF1) のmRNA発現量がCKD群で増加した。さらに、筋芽細胞株C2C12細胞にSCD阻害剤を添加すると同様な結果が得られ、不飽和脂肪酸(オレイン酸)を添加するとその増加は抑制された。また、C2C12細胞にSCD阻害剤を添加するとオートファジー関連遺伝子LC3B-IIのタンパク質発現が減少し、オートファジーの分解基質に結合するp62タンパク質の発現量が増加した。以上より、CKDの骨格筋で減少したSCD活性によるオートファジー障害が筋萎縮に寄与することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、アデニンを用いたCKDモデル動物で腓腹筋の筋萎縮および脂肪酸組成の変化からSCD活性の低下を確認できた。また、in vitroの実験結果からも同様な結果が得られ、さらに不飽和脂肪酸の添加によりその変化が改善されたことから、このSCD活性の低下が筋萎縮を引き起こしていることが示唆された。また、それにはLC3Bタンパク質やp62タンパク質発現変化からオートファジー障害が関与している可能性を示すことができたので、実験は概ね順調であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度は、CKDで筋萎縮およびSCD活性の低下を確認し、そのSCD活性の低下が筋萎縮を引き起こすことを明らかにした。さらに、それにはオートファジー障害が関わっている可能性を示すことができた。次年度は、CKDの骨格筋におけるSCD活性低下によるオートファジー障害をさらに詳細に検討し、そのオートファジー障害がどのような機序(隔離膜形成、オートファゴソーム形成、オートリソソーム形成など)で起きるかどうかを検証する。 CKDモデル動物の腓腹筋の小胞体およびミトコンドリアを抽出し、脂肪酸組成を測定する。蛍光タンパク質を付加したオートファジー関連タンパク質(LC3B、p62)を恒常的に発現する筋芽細胞を作製し、SCD活性阻害によるオートファジーへの影響を検討する。
|
Research Products
(3 results)