2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K19970
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小澤 正直 名古屋大学, 情報学研究科, 名誉教授 (40126313)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 量子論理 / 量子集合論 / トポス量子論 / ハイティング代数 / 直観主義集合論 / 矛盾許容論理 |
Outline of Annual Research Achievements |
「量子集合論」と「トポス量子論」は量子力学の数学的基礎に関する長年にわたる2つのプロジェクトであり,概念的にも技術的にも類似点を共有しているが,その相互関係を明らかにする研究はこれまでなされてこなかった.前年度の研究では,それらの関係を明らかにするための統一的な枠組みを構成した.まず,トポス量子論の内部論理であるスペクトル前層の閉かつ開部分対象のつくる完備ハイティング代数(以下,「トポス量子論理」と呼ぶ)上に矛盾許容的な否定を定義して,標準量子論理からトポス量子論理への「現存在化」と呼ばれる埋め込みを定義する.次に,トポス量子論理に基づく集合論のモデル「トポス量子集合論」を構成し,この埋め込みを拡張して,量子集合論の(デデキント)実数からトポス量子集合論の(デデキント)実数への埋め込み,及び,その共役となるトポス量子集合論の実数から量子集合論の実数への射影を定義して,その性質を詳しく調べた.これによって,量子物理量は,矛盾許容的否定をもつ完備ハイティング代数値集合論の実数の集合に埋め込まれる事が示された.量子物理量が非可換性を持つにも関わらず,それらが分配的論理に基づく完備ハイティング代数値の集合論の実数に埋め込まれる事は,非常に興味深い現象である.今年度の研究では,非可換性が分配的論理でどの様に表現されるのかを明らかにするための研究を行なった.そのため,矛盾許容的否定をもつハイティング代数において,二つの元の可換性を意味する関係が定義できることを示した.更に,ある元と非可換な元が存在するならば,その元の否定と2重否定の交わりが矛盾しないこと,トポス量子論理では,非自明な元はすべてその否定と2重否定の交わりが矛盾しないことなどを示した.このことから,分配束における矛盾許容的否定は非可換性を生み出し,矛盾許容性の程度と非可換性の程度が対応することが結論された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子集合論とトポス量子論は量子力学の数学的基礎に関する2つの長年のプロジェクトであり,概念的にも技術的にも類似点を共有している.にもかかわらず,両者の関係を明らかにする研究はこれまでに例がなく,本研究は,そのような目標に向けて順調に進展していて,すでに40頁近い論文を投稿中である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで量子集合論では,一般に全称量化と存在量化の間でド・モルガンの法則が成り立たないことが知られていたが,量子集合論をトポス量子集合論に埋め込む今年度までの研究から,全称量化と存在量化の間でド・モルガンの法則が成り立つように量子集合論の定義を改良することにより,量子集合論とトポス量子集合論の間の関係がより緊密になることが見込まれる.これは当初予期しなかった成果であるが,今後は,このような動機に基づいて全称量化と存在量化の間でド・モルガンの法則が成り立つように量子集合論の定義を改良し,量子集合論とトポス量子集合論のより緊密な関係を研究する計画である.
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Causes of Carryover |
研究代表者による親の介護が必要になり,予定していた国際会議の参加を見送るなど,研究計画の見直しが必要になった.また,研究成果をまとめた投稿論文の査読に時間がかかり,研究遂行に想定以上の時間を要した.次年度使用額は,国際会議での発表,海外共同研究のための旅費,また,オープンアクセスの論文発表費用などに使用する計画である.
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Research Products
(5 results)