2018 Fiscal Year Research-status Report
科挙・華僑・家族の歴史データから探る教育システムの解明
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17K19994
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
倉橋 節也 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40431663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 健一 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40344858)
津田 和彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (50302378)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 教育システム / シミュレーション / 家族システム / 族譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)エージェント・シミュレーションによる農作物作付け品目 選択モデルの検討 近年、日本の農業分野では高齢化や担い手不足に伴う耕作放棄地の増加により、生産量が低下している。政府や自治体では農作物の生産量や売上を向上させるために様々な施策を講じている。主な施策として、農業法人参入障壁の低減を目指した農地法改正、生産者維持を目的とした補助金、生産・販売の増加を目的としたインフラ投資などが実施されている。これらの施策の中でも、インフラ投資の例として新たな灌漑施設を構築したり輸送手段や販路を開拓したりすることにより大きく売上を向上させる事例が見受けられる。これらの施策に伴う作付け品目の選択の変化に着目し、作付け品目選択モデルを構築してエージェント・シミュレーションを用い、新たな施策の影響度を推定するための作付け品目選択モデルの構築と、モデルに基いたエージェント・シミュレーション環境の構築を行った。 2)モデルベース政策決定 日々、多くの重要な社会・経済政策が決定されている。しかし、多くの政策は過去の経験やデータに基いて意思決定されてきた。多くは、統計的な手法を用い、現象を分析することで、政策効果を推定するものである。このような、エビデンスに基づく政策形成(EBP)と呼ばれる手法に対し、モデルに基づく政策形成(MBP)を提案した。この手法は、データサイエンスおよびエージェントモデルを基盤とし、社会シミュレーション技法を使用する。モデルベースの手法は、現実の現象をモデル化するとともに、仮説による未実現の将来の事象や、実験が困難な事象に対して、計算機実験で効果の予測を行うことができる。ビジネス分野や社会学分野においては、帰納法としてのデータ分析と、演繹法として戦略立案をつなぐものとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の2項目を主として研究活動を実施した。 1)データ分析のための強化学習を用いたエージェントベースモデルの開発を行った。実際の農業生産データからシミュレーションモデルを構築する手法を提案し、実データでの分析を実施した。水資源の開発が農業生産に与える影響は大きく、交通網などの整備によって、他地域への出荷額も大きく影響される。その結果、販路拡大による農産品単価上昇率や、行政のとりうる意思決定パターンを比較し、長期的な価値判断を実施することで、受け取る報酬額が大きくなる結論を得た。また、住民移動に伴う感染症の影響も調査をおこない、エージェントベースモデルの構築を行った。天然痘やインフルエンザなどの感染経路を、WHOなどの調査データをもとに分析を行い、シミュレーションモデルを実行することで、共通の交通手段を多く取ることが、感染速度の増加に大きく影響することが判明した。 2)族譜の収集とデータ化を実施した。中国史の専門家とともに、東南アジア諸国に点在する華僑の族譜データを収集することができた。初年度の調査に基づき、2年度はシンガポール(国立シンガポール大学)に保管してある族譜を中心に調査を実施した、その結果、現在まで辿ることができる、規模の大きい華僑一族の族譜を収集できた。これらは、族譜を大規模に編纂する能力を有することから経済的にも社会的にも成功を遂げてきた一族であり、本研究の分析対象となり得ることが推定できる。特に、シンガポール大学中国図書館に保存してある華僑に関する族譜を調査したところ、白氏の族譜を発見することができた。白氏は、福建、泉州、南案、普江において20代に渡る家系の一つであり、3分冊に記録された族譜を編纂している。これらの族譜記録に基づいて、分析を開始する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
データ分析と接続するエージェントベース・データ同化のため、強化学習手法を用いてモデルパラメータを同定するモデルを構築する。この手法は、実社会で観測されたデータを用いて、その現象に接近するための行動価値関数を学習する。その関数によってモデルパラメータを決定するものである。また、進化計算手法を結合することで、ルールベースのモデル推定を行うことが可能であるため、これらの手法を用いて以下の研究を行う予定である。 1)電力先物市場モデルへの適用 これまでのスポット市場、時間前市場に対して、今後導入される電力先物市場がどのような影響を与えるのかを明らかにすることを目的に、両者をモデル化した人工電力市場を構築する。また、再生可能エネルギーの増加に伴う供給量変動の関係、発電事業者の最低価格保証制度の効果、供給可能量変化故障等が市場価格に与える影響、原油価格の変化が市場価格に与える影響などを、データ同化手法を用いて推定するシステムを構築する。このことで、電力市場のシステムプライスから、市場設計を変更した場合の将来予測を可能とする。 2)感染症モデルへの適用 新型感染症を対象としたシミュレーションモデルを構築する予定である。人の移動が広範囲・高頻度で発生する現在社会で重要な事は、感染症の流行を食い止め、人的・経済的損失を最小にする有効な医療政策決定にある。医療政策決定者がどのような現象に着目し、可能な政策変数をどのように操作するのかも、被害を最小限に留めるためには重要である。操作できる政策には当然コストが伴う。また、現在では一国の政策決定だけで流行を留めることは困難であり、各国の協調が問われている。多国間での協調を促す政策立案や政策決定者の育成を目的としたゲーミング・シミュレーション環境を構築し、実際の感染事例データから、感染拡大・防止の予測モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
東南アジア諸国に点在する華僑の族譜データを収集するために、初年度の調査に基づき、シンガポール(国立シンガポール大学)に保管してある族譜を中心に調査を実施した。調査の結果、想定以上の多数の資料が発見されたため、当該年度では、それらの保管資料を中心に調査を実施したため、他の地域での調査を次年度に繰り越すこととした。次年度では、他の東南アジア諸国の華僑族譜データの調査を実施する予定であり、それに関連した旅費や資料代を経費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)