2018 Fiscal Year Research-status Report
Structure Biology Study on Effects of Hyperthermia on Ku: Evolution From DNA Damage Repair to Protein Damage Repair
Project/Area Number |
17K20042
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 義久 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (20302672)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 温熱 / 放射線 / DNA修復 / 円二色性分光 / タンパク質変性 / Ku |
Outline of Annual Research Achievements |
Kuタンパク質とは、DNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット(DNA-PKcs)とともに、DNA二重鎖切断損傷のセンサーとして、その非相同末端結合(NHEJ)による修復おいて極めて重要な役割を担う分子である。本研究は、Kuタンパク質の変性、失活の原理と、これに対する防護、回復のメカニズムを明らかにすることを目的として行った。 本年度は、Kuについてはバキュロウイルス発現系を計画していたが、遺伝子組換えに関する法令遵守の観点から、調整方法を慎重に検討する必要が生じた。そこで、代わってヒト培養細胞から精製したタンパク質を用いて円二色性(CD)分光解析を試みたが、十分な吸光度を得るところに至らなかった。これを踏まえ、タンパク質フォールディング機構の違いに注意しながら大腸菌での発現系を利用するか、ウイルス不活化とその保証を行って許可を得た上でバキュロウイルス発現系を利用することを計画している。 大腸菌での大量発現系が確立しているXRCC4およびそのファミリー分子であるXLF、PAXX、さらにp53を用いてCD分光計測および温度依存性の解析を行った。これらについてαヘリックス、βシート、ターン、ランダムコイルの含量を求めることができ、p53で加温処理による二次構造含量の変化が認められた。XRCC4についてはリン酸化部位変異体や、小頭症、発育不全を示す遺伝病患者における変異を模擬した変異体、がんリスクに関係するという報告がある多型を模した置換体などが作製されている。p53についてはリン酸化部位変異体が作製されている他、温度感受性変異が知られている。これらの変異体、置換体に対する温熱の影響を調べることでタンパク質の変性や失活の原理や疾患との関係についての情報が得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Kuタンパク質の調製については、遺伝子組換えに関する法令遵守のため、バキュロウイルス発現系から切り替えてヒト培養細胞から精製したタンパク質を用いた解析を試みたが、円二色性(CD)分光による解析結果を得るところに至らなかった。この点に関しては予定より遅れている。 しかし、DNA二重鎖切断修復タンパク質であるXRCC4、XLF、PAXXとがん抑制遺伝子産物であるp53についてはCD分光計測結果が得られた。XRCC4については、従来のX線結晶解析で明らかでなかったC末端領域も含めた全体の構造情報が得られたことは大きな意義がある。XRCC4、p53については多数の変異体が作製されており、これらの解析によって当初想定していなかった成果が得られる可能性が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
円二色性(CD)解析が可能な十分な吸光度、すなわち濃度を得るためには、大腸菌かバキュロウイルスの発現系を用いる必要がある。大腸菌は遺伝子組換え実験の条件はクリアしているが、ヒト細胞とのタンパク質フォールディング機構の違いに注意する必要がある。一方、バキュロウイルスの場合、宿主である昆虫細胞中でのタンパク質フォールディング機構はヒト細胞に近いとされるが、ウイルスの不活化とその保証に慎重を要する。このように一長一短があるため、平行して進めたいと考えている。XRCC4、p53については、リン酸化部位変異体や小頭症、がんなどと関連する変異体の解析を進めることを計画している。また、小角散乱やクライオ電顕を用いた構造解析の可能性も探っている。
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Causes of Carryover |
平成30年度の未使用額は98万円程度であるが、平成29年度の未使用額が115万円程度あった。平成30年度の支出は、当初予定に比べれば、カラムなどの購入の分増えたが、その他の消耗品などは当初予定とあまり差がなかった。最終年度延長となった平成31年度は研究補助や受託サービスの活用によってより研究の進展を図るとともに、国際学会での発表による情報発信、収集の強化などに活用したいと考えている。
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Research Products
(4 results)