2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of self-illuminating nanosystems for autonomous functioning in the body
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17K20109
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岸村 顕広 九州大学, 工学研究院, 准教授 (70422326)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 生物発光 / ベシクル / ナノメディシン / 光応答性 / 薬物送達システム / ケージド化合物 / 近接効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ベシクル内部に発光酵素を封入し、ベシクルに組み込んだ光応答性分子が発光酵素由来の光をトリガとして効率的に機能するシステムの構築を目指している。 平成30年度は、前年度確立した手法を用いて、発光酵素を封入したベシクルの機能評価をさらに進めたが、その作製をするにあたってタンパク質の封入効率があがりづらく、最終的な光応答の評価の感度に懸念が持たれたため、その改善を検討した。その際に、ホタルルシフェラーゼ(FLuc)との比較のためにbeta-galactosidase (b-gal), diamine oxidase (DAO)などの酵素も用いて実験を進めたところ、従来のベシクルへの封入効率(フィード量に対する使用率)~1%程度を大幅に上回る~40%程度の封入効率を可能とする手法を新たに発見した。得られた構造は、ベシクルの内部に酵素が濃縮された部位を持つyolk-shell構造体(卵の黄身―殻型の構造体)であった。この構造体は調整時間を制御することで粒径が300ー500 nmで制御できたほか、酵素活性をある程度維持していることも判明した。このような構造体を高分子やタンパク質の自己組織化を用いて実現した例はこれまでになく、非常に重要な発見といえる。その一方で、FLucについては、現在のところyolk-shell構造体はできておらず、さらなる調製条件の検討が必要であった。一方、生理活性を持つペプチドを導入したPICsomeに光応答性を付与すべく、ケージド化合物とペプチドの双方を内蔵したPICsomeの構築を狙ったが合成で難儀した。さらに、光応答的に核酸医薬を放出する仕組みを構築するために核酸をベシクル膜に内蔵できるベシクルを開発した。これらの検討の過程でPICsomeの細胞内移行能の評価が進展し、PICsome物性と細胞取り込み挙動の相関について深い知見を得るに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的に想定している目標である生物発光酵素を利用した光駆動ナノシステムの開発に向けては、1.発光酵素の大量調製、2.封入条件・封入量の最適化・最大化、3.酵素活性の確認、4. ベシクルの化学修飾法の確立、5. ベシクルの化学修飾と細胞取り込み能の相関評価、6. ベシクルへの光応答性部位の導入、7. 光応答性評価、8. 体内動態の評価、を実施していくことが必要である。平成30年度は、特に2ー7について実施を行い、2,3,5について、特に深い知見や、yolk-shell構造体などの予想を超えた結果を得るに至った。一方で、yolk-shell構造体などの予想を超えた発見があったためにそこに注力を行ったこともあり、光応答性分子の大量合成がとPICsome への装着が遅れ、動物実験の実施に至っていない。以上を踏まえ、平成29年度に未実施の内容についても進めることができたものの、進歩があった面となかった面の双方をそれぞれがあったことを斟酌して、概ね順調に進展していると結論する。
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Strategy for Future Research Activity |
Yolk-shell構造体についてはその学術的な興味はつきないが、当初計画の遂行にも注力して研究を進める。特に動物実験の見通しが立っていないため、光応答性ベシクルの大量調製を急ぎ、試験的な評価につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度末から2019年度にかけて開催される国際会議(米国)に参加する予定であり、その参加費の支払い、及び、会 議での議論に基づいてフォローアップの実験等を実施する必要があり、予定期間を超えての助成金使用が必要であるため。
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Research Products
(16 results)