2018 Fiscal Year Research-status Report
近現代イギリスにおける「人と動物の関係史」ー領域設定による総合的理解モデルの構築
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17KK0021
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
伊東 剛史 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (10611080)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | イギリス史 / 人と動物の関係史 / 感情史 / 文化史 / アニマル・スタディーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は近代イギリスの動物福祉を主題とする基課題(課題番号:16K03108)を発展させ、人間社会と動物との多元的関係を分析するための研究領域を開拓する。とくに、人の動物に対する感情的反応に着目するため、ベルリンにある感情史研究センターにおいて共同研究に取り組むことを計画した。初年度にあたる2018年度は、翌年度に控えている訪問先研究機関での研究を日本および海外に波及させる準備を進めた。具体的には、①感情史研究センター長であるUte Frevertによる感情史の入門書 Emotions in History: Lost and Found, Central European University Press, 2011 の翻訳出版企画を進行させ、刊行に導いた(『歴史の中の感情ー失われた名誉/創られた共感』櫻井文子訳、東京外国語大学出版会、2018年)。同書に解説「なぜ今、感情史なのか」を寄せ、本研究の方法論で感情史の可能性と課題について論じた。②本研究では、特定の動物に対する特定の感情が社会で幅広く共有されるようになる過程において、出版メディアの役割をとりあげる。そこで、本年度は19世紀後半から20世紀初頭にかけての児童文学について、テキストマイニングによる分析を試みた。頻出語や共起語の分析を従来の史料分析の手法とどのように有効に結びつけることができるのか、引き続き検討する計画である。③グローバルな展開を視野に入れるため、イギリスの動物繁殖と海外における動物収集の事例研究に着手した。一定の成果が得られたため、2019年度7月に開催される国際学会 International Society for the History, Philosophy and Social Studies of Biology (オスロ)および、International Society for Eighteenth-Century Studies (エジンバラ)での研究報告に応募し、ともに採択された。後者ではMan and Beastというセッションでの報告になり、新たな協力関係の開拓による本研究のさらなる国際的展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に控えている訪問先研究機関での研究に向けて着実に準備を進め、年度末に渡独することができた。2019年度に開催される国際学会での研究報告についても用意を進めることができ、採択された。また、史料分析の手法として、テキストマイニングにも取り組むことができ、今後の研究の展開の可能性が広がった。さらに、研究成果の還元についても、動物園の歴史や、動物福祉の歴史に関する講演の依頼を受けて、それらを積極的に引き受けることで、日本とに比較の視点からイギリスの「人と動物の関係史」について考察を深めることができた。その視点は、今後、訪問先研究機関で研究を進めるうえでも、重要なものになってくるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、訪問先研究機関において感情史の方法論を用いた「人と動物の関係史」構築に取り組みつつ、適宜イギリスでの史料調査を実施する。こうして方法論・理論研究と具体的史料に基づいた実証研究との往還により、本研究を遂行する。また訪問先研究機関にて定期的に開催されるコロキアムに参加し、他のフィールドやテーマに取り組む研究者との交流により、比較と関係性の視点から、本研究の特性をより明確なものとする。
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