2020 Fiscal Year Research-status Report
The Nature of Quakers' Decision-Making and Its Applied Possibility to Democracy
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17KK0035
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中野 泰治 同志社大学, 神学部, 准教授 (80631895)
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Project Period (FY) |
2018 – 2021
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Keywords | 自由主義クエーカー / 合議形式 / 民主制への応用 / 社会学的分析 / 合意形成論 / 組織論 / M. P. フォレット |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、クエーカーの合議形式についてアンケート調査、インタビュー調査を用いて、神学的視点からのみならず、社会学的視点から研究することを目的としたものであった。しかし、2020年3月4日に渡英し、14日間自宅隔離の後、すぐに全国的なロックダウンが宣言された。ロックダウンが長期化することを見込んで、実地調査は取りやめ、合議形式の理論的側面(合議形式の理論的分析と民主制への応用可能性)について研究する方向に課題を変更した。伝統的なクエーカーの合議形式は,沈黙の内に祈りを合わせ、最後の最後まで異質な意見に開かれつつ、話し合い、集会としての一致(unity)を目指すというものである。クエーカーの三つの伝統それぞれにおいて形式面ではほぼ相違はないが、一致に至るまでのストーリー解釈が多様であることが判明した(この点が第一の成果であり、2021年6月発行予定の論文にまとめた)。なお本課題では、英国のクエーカー(自由主義クエーカー)に焦点を当てているため、自由主義クエーカーの合議形式の特徴とその解釈の多様性について分析を行った。英国のクエーカーは、主に少数のクリスチャン・クエーカーと多数のユニバーサリスト・クエーカーとによって構成される。前者の合議形式の解釈は伝統に沿ったものであるが、後者の解釈は新ヘーゲル主義の影響を強く受けた、「自己から始まり大いなる自己との一致」で終わる自己充足的なものであるが、そうした解釈の相違は合議においては大きな影響は与えないことも判明した。また一方で、自由主義クエーカーの合議形式は、20世紀初頭の政治・社会思想家であるM. P. フォレットの意思決定論、組織論と共通点を多くもつが、クエーカー自身もそのことを意識していたことが明らかとなった。これが第二の新たな成果であるが、現時点ではまだ理論的分析が完全には行えておらず、来年度の課題として研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既にフォレットの理論の特性についてはほぼ分析済みであるため、現時点での残された課題は、(1)フォレットの理論を現代の合意形成論や組織論のなかで、数理的モデルを用いながら位置づけること、(2)クエーカー自身によって参照されるフォレットの理論とクエーカーの合議形式を理論的整合性をもって結びつけることで、クエーカーの合議形式の特徴を分析とすることの二つである。ただし、フォレットの理論についての数理分析については先行研究がないため、時間がかかることが予想される。その場合には、数理分析を一旦保留し、合意形成論で指導的立場にあるハーバード大学のサスキンド教授(連絡済)の合意形成論を基にフォレットの意思決定論や合意形成論、およびクエーカーの合議形式について分析し、民主制における応用可能性について検討する。以上の研究の予定時間は一年ほどであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、現時点での残された課題は、(1)フォレットの理論を現代の合意形成論や組織論のなかで、数理的モデルを用いながら位置づけること、(2)クエーカー自身によって参照されるフォレットの理論とクエーカーの合議形式を整合性をもって結びつけることで、クエーカーの合議形式の分析とすることの二つである。(1)の課題については、現代の合意形成論と組織論について概観し、それらを用いて、フォレットの理論の特性について明らかにする。(2)の課題については、クエーカー自身が「愛」という概念においてのみ、フォレットの理論とは異なると述べているが、その愛の意味について把握した上で、フォレットとクエーカーの合議理論の特性を明らかにする。そして、もう一つの課題(最終課題)として、(3)クエーカーの合議形式の民主制への応用可能性について現代の熟議・討議民主主義論などの成果を参照しながら、考察する。
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Research Products
(1 results)