2021 Fiscal Year Research-status Report
The Body Politics of Migration: Globalization of Indian Dance and Agencies
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17KK0038
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
竹村 嘉晃 国立民族学博物館, 南アジア地域研究国立民族学博物館拠点, 特任助教 (80517045)
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Project Period (FY) |
2018 – 2022
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Keywords | シンガポール / インド系ディアスポラ / 音楽・舞踊 / 「芸のキャリア」 / 多文化主義 / 文化芸術政策 / ラーマーヤナ / グローバル・インド |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度と同様、新型コロナウィルスの感染拡大が深刻化し、かつ変異株の世界的な流行による影響から、今年度予定していたイギリスとシンガポールでの在外研究とフィールドワーク(2020年度の実施計画分)を断念せざるをえなかった。その一方で、年度当初からフィールドワークの実施が不透明であったことから、これまでの調査で収集した資料とデータを整理・分析ならびに文献研究を進め、その成果を論文にまとめることで研究の進展を図った。具体的には、ケーララ出身のインド人舞踊家のライフヒストリーと多文化主義の影響をうけた創作活動について考察した論文(三尾稔編『南アジアの新しい波・下巻』所収)とシンガポールにおけるラーマーヤナの受容動向と芸術文化政策やグローバルなインド人ネットワークとのつながりを検討した論文(福岡まどか編『現代東南アジアにおけるラーマーヤナ演劇』所収)をまとめ、それぞれ年度内に刊行された。 また、これまでの調査でインタビューを実施したインド系シンガポール人の実演家たちにオンラインで聞き取り調査を行い、コロナ禍での舞台活動や教授方法やクラスの運営面、生徒たちへの影響などの実態を把握するとともに、政府の支援策についてかれらの見解を考察した。インタビューを通じて得た知見をもとに考察をすすめ、2022年7月にポルトガルで開催される国際伝統音楽学会(ICTM)の世界大会にてパネルセッションとして発表を予定している。 くわえて、シンガポールの中華系とマレー系の舞踊・演劇を専門とする若手研究者とオンラインによる意見交換会を実施し、とくに芸術文化政策が具体化する以前(独立前後)の上演芸術をとりまく状況について、各コミュニテイの動態や歴史的過程を共有した。ここで共有した知見をもとにさらなる分析を進め、来年末に予定している国際シンポジウムで一つのパネルセッションとしてその成果を公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗状況がやや遅れた理由とは、昨年度と同様新型コロナウィルスの感染拡大と変異株の世界的な流行が続き、海外渡航制限が発令された影響から、予定していたイギリスでの在外研究とシンガポールでのフィールドワークを実施することができなかったことにある。その一方で、現地でのフィールドワークのかわりに、これまでに構築したネットワークを用いてオンラインによるインタビュー調査を進め、コロナ禍でのインド人芸能実演家たちの活動実態や芸能教授機関の運営状況や舞台制作活動などについて把握することができた。 また、今年度は、当初からフィールドワークを実施できる可能性が極めて低いだろうと想定し、文献研究を中心にこれまでの研究成果をまとめた論文の執筆を積極的に進めたことで、研究上の進展はある程度みられたといえる。また海外研究協力者とは個別での情報共有や意見交換をオンラインで進め、本研究の主題となるインド系ディアスポラと芸能をめぐるポリティクスについて、地域独自の状況を把握することができた。そこでの議論のもと、本研究の成果として開催を予定している国際シンポジウム(2023年3月予定)にむけた枠組みや各パネルのテーマと発表者について意見交換を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は新型コロナウィルス変異株の急速な感染拡大により、前年度同様海外調査が実施できなかったことから、本研究の研究期間をさらに一年延長する。ただし、来年度も新型コロナウィルスの感染状況が不透明であることから、海外渡航に関して長期調査から短期調査へと実施計画の変更を検討し、出来る限り実施の可能性を見極める。 一方、海外調査が実施できない場合も視野にいれ、これまでに収集したデータをもとに現段階で出来るかぎりの研究成果をまとめ、来年度末に単著を刊行する計画を新たに検討し、その執筆作業を進める。 また当初の計画通り、本研究の成果公開の一環として、イギリス、シンガポール、北米から研究協力者を招聘し、インド人ディアスポラと芸能に関する国際シンポジウムを実施する。研究計画ではシンガポールで国際シンポジウムを開催する予定であったが、新型コロナウィルスの感染状況および運営面での諸事情を考慮し、日本での開催に変更する。海外研究協力者からはすでに参加の承諾を得ているが、新型コロナウィルスの感染状況や隔離規制など関係部署との連絡を密にし、渡航の可能性を見極めながら実施計画を進めていく。場合によっては一部、あるいは全てオンラインで開催する場合もありうる。
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