2018 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティ型ワークスペースにおけるコラボレーションの生成・展開に関する国際比較
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17KK0040
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宇田 忠司 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (80431378)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | コミュニティ / ワークスペース / コラボレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,コミュニティ型ワークスペースにおけるコラボレーションの生成・展開メカニズムを国際的に比較・検討することである。具体的には,聞き取り調査や参与観察などの質的手法と質問票調査という量的手法を併用し,研究を遂行していくことが目指されている。 研究期間の1年目である平成30年度の主要な成果として,「コワーキングスペースにおけるコミュニティ構築とサステナビリリティ向上の要因」が挙げられる。 本論文の目的は,質問票調査にもとづき,コミュニティ型ワークスペースの代表例であるコワーキングスペースにおけるコミュニティ (交流・協同) 構築とサステナビリティ (売上・利益) 維持・向上の影響要因を明らかにすることである。具体的には,国内のコワーキングスペースの全数に近い (2014年7 月時点) と考えられる365スペースを対象に質問票調査を実施し,168スペースから収集されたデータについて,コミュニティ構築とサステナビリティ維持・向上に関する重回帰分析を行った。分析結果から,(1)コミュニティとサステナビリティのいずれかに影響を与える要因 (コミュニティ志向 (たとえば,非会員の利用時間),サステナビリティ志向 (たとえば,一時利用者の割合)),(2)コミュニティとサステナビリティを同時に追求できる要因 (両立志向 (利用者間の交流)),(3)コミュニティとサステナビリティのトレードオフを生じさせる要因 (トレードオフ (オープンンスペース座席数)) が示唆された。なお,本論文に関する知見は,平成30年7月に開催された34th European Group for Organizational Studies Colloquiumにおいても報告されている。当該スペースに関する経験的知見は依然として不足しているため,上記の成果は一定の理論的・実践的意義を有すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記区分の理由は,交付申請書に記した主な研究計画をほぼ遂行できたからである。具体的には,渡航先や所属機関との調整を行いつつ関連資料を渉猟・入手した。従前の研究結果の再検討と先行研究のレビューをもとに試論的研究枠組を導出を図った。適宜,共同研究予定者とオンライン会議や国際学会にて情報共有・意見交換を行い,研究の設計の検討や枠組の洗練に取り組んだ。 くわえて,研究実績の概要にて記した成果(コミュニティ型ワークスペースの運営やそこでの交流・協同といった中核的な論点に関する)は,本研究の理論枠組の精緻化や海外での当該スペース関する経験的調査など今後予定している研究活動の遂行におおいに資するからである。 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を推進するための主要な方策として,渡航先であるパリに本部が存在するResearch Group on Collaborative Spaces(当該スペースにまつわる現象に関心のある研究者や実務家から構成される国際ネットワーク組織)の活動に積極的に参加することが挙げられる。この組織は,パリをはじめ欧米やアジアの主要十数都市に支部が存在し,当該地域を代表する機関の研究者が参画しており,彼(女)らが企画・運営するイベント等には数多くの実務家も集う。そのため,先端的かつ示唆に富む理論や方法論の学習,適切なリサーチサイトへのアクセス,共同調査・研究の遂行をおおいに期待できる。こうした方策を通じて,調査・研究の実現可能性や質的・量的発展を図る。
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