2018 Fiscal Year Research-status Report
Faith and Social Engagement of Muslim Women in Malaysia: Informatization, Identity and Agency
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17KK0057
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
安達 智史 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (90756826)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | ジェンダー意識 / イスラーム / ダブル・シフト / マレー系女性 / マレーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代化とイスラーム化が同時進展するマレーシアにおいて、マレー系女性が、労働市場への参加とイスラームの信仰とをいかに両立しているのかを明らかにすることを目指している。 本年度は、マレーシア人大学生を対象に家庭と社会における役割をめぐるジェンダー意識について、フォーカス・グループ・インタビューを用いて調査をおこなった。そこで、マレーシア人の若者が有するジェンダーに基づく性質と役割分業のつながりについて明らかにした。その結果、①学生たちが、女性/男性をめぐる、極めて強固なジェンダー意識(ex.感情的/合理的、フォロワー/リーダー、内/外など)を有していること、②女男をめぐる性質(女性:好奇心旺盛、ハードワーク、男性:シンプルな思考、怠け者)が社会の地位をめぐる考え(フォロワー/リーダー)と結びついていること、③男性よりも、女性(とりわけマレー系)の方が、ジェンダー役割をめぐり保守的な考えを有していることなどが明らかとなった。加えて、大学生にジェンダー役割をめぐる意識について、質問紙調査をおこなった。その結果は、上記のフォーカス・グループの結果を部分的に支持するものとなっている。これらの研究は、女性の就業率の低さや、組織上層部における女性の過小代表という、マレー社会が抱える問題を理解する上で重要な意義を有しているといえる。 加えて、女性の起業家および専門職女性への一対一のインタビュー調査をおこなった。そのなかで、①起業を選ぶ女性は、様々な理由(とりわけ離婚)からそれを選択すること、②起業は、高学歴な女性の間で、よりフレキシブルで、高収入を得る機会を提供するものである一方で、低い学歴の貧しい女性にとっては生きるための術として選択されていること、③起業も専門職も、時間的フレキシビリティを求めることが重要な動機になっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受け入れ大学の状況や、研究協力者とのやり取りのなかで、当初の研究予定を部分的に修正することとなった。とくに「信仰と社会参加」という抽象的な枠組みをそのまま用いるのではなく、「家族役割と労働役割」の間の葛藤という、より広い社会問題にフォーカスを当てることとした。それにより、「マレーシア女性の信仰と社会参加」という当初テーマを、具体的な事象と結びつけ、深めることができた。また、あわせて100名以上のインフォーマントと接することができ、今後の調査のためのさまざまな手がかりをえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、着手しはじめた、女性起業家へのインタビューを進める。起業は、ジェンダー、宗教、貧困といったさまざまな問題と結びついており、マレー系女性の自律や信仰をめぐる課題と関連を有している。とくに高学歴の起業家と低学歴の起業家が、それをイスラームの観点からどのように理解し、自身の家庭での役割と社会での役割にいかなる影響を与えるのかを検討する。また、在外研究中に構築した異分野(経営学、教育学など)の研究者ネットワークを活用し、女性の信仰と社会参加をめぐるより幅広い課題にアプローチする。
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Research Products
(5 results)