2019 Fiscal Year Research-status Report
エコシステムの可視化と自己組織化パターンの解明によるマネジメント方法の提案
Project/Area Number |
17KK0065
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
辻本 将晴 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (60376499)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | ビジネスエコシステム / エコシステム / プラットフォーム / コンバージェンス / 自己組織化 / 非接触IC / 水素エネルギー / 自動運転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,次の3つである.第一に,社会ネットワーク分析と定性分析を組み合わせたBES分析プロセスとツールを作成する.第二に,作成した分析プロセスとツールを分析対象(非接触ICによる決済,水素エネルギー,自動運転)に適用して,グローバルな産業融合によるエコシステム生成の自己組織化パターンを同定する.第三に,Prof. Hacklinの高度なマネジメント研究力・提案力の支援を受け,具体的なエコシステムのマネジメントに資する提案を行う. それぞれの目的について研究実績の概要をまとめる.第一の目的に関しては,関連研究のレビューを行い,組織学会の組織論レビューに応募すると共に分析プロセスを定義した.ツールについてはデータベース(Factiva)を用いた記事内での共起関係に基づくネットワークの可視化を可能とした.第二の目的に関しては非接触ICに関する論文がAcademy of Management のPaper Development Workshopに採択された.また,水素エネルギーに関する論文がResearch Policy誌のSpecial Issueにおける国際会議に採択された.これらの研究において自己組織化パターンの同定を試みおり,その中でも特にIntegral Capability (Helfat, 2018)に着目し,特に経路依存性による自己組織化とそれを超えるIntegral Capability,既存のエコシステム構造に対する組み合わせの良い,ハイブリッドなエコシステムデザイン能力,そして少数のアクターによるLeanなエコシステム(Minimum Viable Ecosystem)の構築パターンについて議論している.第三の目的に関しては,トヨタ・モビリティ・ファンドの研究プロジェクトに採択され,水素エネルギーエコシステムのデザインに取り組んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本共同研究によって執筆した論文原稿2本について,国際学会に採択され学術誌掲載に向けて完成度を高めていっている.一つは,Academy of ManagementのPaper Development Workshop(“Emerging Technologies and Ecosystems:Opportunities and Challenges”)であり非接触ICに関する研究である.もう一つはResearch Policy のSpecial Issue "Innovation Ecosystems and Ecosystem Innovation"に先立つ国際会議であり,採択された論文がSpecial Issueで査読される予定となっている.これらはいずれもManagement Science分野で国際的にトップの学会,学術誌であり,トップジャーナルに掲載される可能性が高い. また,Edward Elgar Publishingによる書籍「Handbook on Digital Business Ecosystems」にプロポーザルを送り,採択されている.これは情報銀行に関する研究を予定している.さらに,1本のレビュー論文について組織学会による組織論レビューに応募中である.今後,Industrial and Corporate Change Special Issueおよび他3本の論文の投稿を予定しており,同時に8本の論文が掲載に向けて進展している. さらに,本プロジェクトの関連でAirbus社のUAM(Urban Aerial Mobility)エコシステム構築責任者と知り合いになり,フランスEMLyon Business Schoolの研究者と3名共同で論文執筆を企画,実行中である. COVID-19の影響で出国,滞在ができなくなっているが,研究は順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況でのべた7本の論文と2本の書籍に加えて,1本の新規の論文と,1冊の単著での書籍の執筆の企画を追加しようと考えている.それぞれについて今後の展開予定を簡潔にまとめる.AOMについてはAOM Discovery かResearch Policy Xへの投稿を計画している.Research Policy SIは10月が締め切り予定である.Edward Elgar Publishingの書籍については数ヶ月以内にデータ収集予定である.組織論レビューは6月に採否の連絡がある予定である.Industrial and Corporate Change Special Issueは9月が締め切りである.その他3本については概ね原稿が固まりつつあるため,適切な学会誌に投稿する.UAMについてもオンラインで打ち合わせを行いながら原稿作成を進めている. 課題が2つある.第一は自動運転エコシステムに関する研究が進展していないことである.基礎的なデータは収集したがそこからの具体的な原稿化や投稿ができていない.これについては,自動運転研究会を立ち上げ,関連する企業から集まってもらっていたのだが,オンライン化して継続することで成果創出につなげる予定である. 第二はCOVID-19によってスイス滞在ができない状況であるため,共同研究者との打ち合わせがオンラインのみになっていることである,これについては状況を見守るしかないが,すでに多くの論文執筆企画を初期に立ち上げていたので,深刻な影響とまでは言えない.
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Research Products
(10 results)