2019 Fiscal Year Research-status Report
Design of hybrid particles with solid catalyst and enzyme for cascade catalytic reactions
Project/Area Number |
17KK0124
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石井 治之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授(テニュアトラック) (80565820)
|
Project Period (FY) |
2018 – 2020
|
Keywords | 金ナノ粒子 / 酵素 / 固体触媒 / ナノ粒子 / グリーンケミストリー / カスケード反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体触媒や酵素は、工業プロセスにおける有機合成や材料合成に欠かせない触媒である。固体触媒の分野では、固体触媒をナノサイズ化し優れた触媒を開発する研究が広く行われている。この触媒ナノ粒子は、従来触媒より温和な条件で反応が進行し、また水溶媒中でも優れた活性を示す。また、酵素は分子特異的で高効率な反応を触媒することで知られている。しかしながら、酵素自体が高価であること、安定に運転できる反応条件が限られていること、一度失活すると再生が困難であること、など、改良すべき課題も多い。ここで近年、触媒ナノ粒子が酵素と同様の触媒能を持つことが報告された。触媒ナノ粒子は、分子特異的ではなく効率が低いといった課題があるものの、酵素に比べると安定性が高く、安価で使用できる可能性がある。 本研究では酵素および触媒ナノ粒子を利用した新たな触媒反応プロセスの開発を目指す。例えば、温和な条件で新たな材料創成となる反応プロセスの構築や酵素や固体触媒を複数組み合わせた逐次反応(カスケード反応)の実現を目的に研究を行う。酵素および固体触媒の欠点を補うため、各触媒の長所を最大限発揮できる反応条件下で行うことで効率的な反応を達成することを目標とする。 2019年度は、2018年度に引き続き、水溶性物質の酸化反応をモデルとして触媒ナノ粒子の触媒性能を評価した。酸性から塩基性条件まで幅広いpH条件における触媒活性を評価したところ、特定のpH条件で高い触媒能を示した。これは、酵素を触媒として用いた場合とは異なった。この成果をもとに材料合成の触媒として使用することを検討し、十分に機能することを確認した。また共同研究先へ渡航し、これまでの成果を議論し、論文投稿の準備を行うとともに、今後の研究方針について意見交換した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、金ナノ粒子の水溶媒中での触媒活性について、pHの影響を明らかにできた。表面修飾剤や表面電荷の違いにより、触媒活性が異なることがわかった。また、複数の触媒反応について評価手法を確立することができた。さらに、金ナノ粒子を触媒とした材料合成について検討を行い、温和な条件で材料合成可能であることを示唆する成果を得た。 次に、スイス工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)のPeter Walde教授のもとに滞在し、これまでの研究成果について意見交換し、論文投稿について議論した。新規で独創性の高い研究を実施するための研究の方向性を確認した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、固体触媒(ナノ粒子)の水溶媒中での触媒活性を評価し、酵素の触媒能の違いを明確にすることを目的とした研究を行う。ナノ粒子と酵素の両者で複数の酸化反応を行い、触媒として機能する条件(pH、温度、試薬濃度など)を比較する。ナノ粒子が酵素よりも優位に機能する反応条件の探索を行う。次に、得られた知見をもとにナノ粒子を利用した材料合成を行う。共同研究者のWalde教授が行っている酵素反応をモデルとした合成プロセスをはじめ、温和な条件での材料合成を試みる。 また、ナノ粒子は強酸条件や高温といった酵素が失活する厳しい条件でも利用できることが報告されている。したがって、酵素では不可能な反応条件で触媒反応を行い、反応速度の上昇や収率向上を検討し、新たな材料合成の反応プロセスの構築を行いたい。
|