2017 Fiscal Year Research-status Report
高密度・高精度点群処理による工業設備の保全支援システムの研究
Project/Area Number |
17KT0040
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
増田 宏 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (40302757)
|
Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
|
Keywords | 点群処理 / 設備の保全 / 形状処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,測量分野のレーザスキャナを用いて取得された,工業設備の高密度・高精度点群を用いて,保全支援システムの実現することである. 基礎的な検証として,構造物の部材の高密度点群計測を行い,劣化検出が可能な条件について検討をした.その結果,現実的な計測距離において,部材のたわみを 0.5 mm 程度の精度で検出できることを確認した.また,燃焼炉を例題として劣化検出手法の開発を行った.多重解像度表現を用いることで,磨耗や付着による劣化,小スケールのクラックなどの異なるスケールの劣化検出ができることを確認した. また,微小な変形を検出するためには,高精度なレジストレーションが必要であることが判明したため,高速かつ高精度なレジストレーション手法の開発も行った.ある程度のレジストレーションの改善が見られたが,今後,さらなる効率化と高精度化を検討していく予定である. 保全作業を支援するためには,想定外の事態を発見するための目視検査は非常に重要である.そこで,高密度点群を用いて,仮想現実環境で目視検査を行うVR 環境を開発した.VR 環境においては,高いフレームレートによる描画が必要となるが,高精細化とのトレードオフとなる.本年度は,VRデバイスに解像度に適合させた点群描画と,利用者が入力デバイスを用いて選択的に詳細化する仕組みを構築し,十分なフレームレーとでの描画ができることを確認した. 自動計測ロボットについては,本年度は,主としてハードウェア環境の設計と実装を行った.レーザスキャナを搭載できる移動ロボットのプロトタイプを開発し,ロボットが動作することを確認した.また,新規に購入したレーザスキャナを操作するための制御環境を構築し,その動作を確認した.今後は,既に開発した点群からの移動経路探索手法の組み込みによる自律移動の実現と,最適計測位置の算出手法の検討を進める予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主な研究課題は, (1) 高密度計測で得られた大容量の点群から,微小な劣化を検出するための手法の確立,(2) 高密度大容量の点群を用いて,仮想現実環境で目視検査を行うシステムの開発,(3)レーザスキャナによる計測作業そのものを,移動ロボットを利用した自動計測システムによって効率化するための研究である. これらの課題については,概ね順調に推移していると判断している. 劣化検出については,基礎的な検討が予定通り実施され,最新の測量用レーザスキャナを用いることで,大型構造物の劣化検出が可能であることが実証できた.また,実際の大型構造物を用いて,異なるスケールの劣化が検出可能であることもわかった.大型構造物の計測では,複数箇所からの計測データを統合する必要がある.一方で,レジストレーションと呼ばれる点群データ統合の過程で発生する誤差のために,微小な変形が消失してしまういう問題が明らかになった.現時点では,レジストレーション前の点群から劣化検出することでこの問題を回避している. 仮想現実環境での目視検査システムにおいては,ゲーム用に開発された安価な VR システムを用いて,点群描画のための基本的なフレームワークを構築することができた.VR に必要なフレームレーとを実現するためには,最高解像度での点群描画は困難であったが,利用者が注視したい箇所を選択的に指定し,部分的な詳細化を行う仕組みを導入したことで,描画速度の問題を回避した. 移動ロボットにおいては,ハードウェアの初号機を実装し,想定される段差を乗り越えて動作することを確認した.また,移動ロボットに搭載したレーザスキャナの制御ソフトウェアを作成し,動作することを確認した.現在は,移動ロボットの振動からレーザスキャナを保護する必要があるため,防振対策について検討している.
|
Strategy for Future Research Activity |
劣化検出については,試験部材を用いて,たわみ検出が行えることを実証した.本年度は,大型構造物として,電力鉄塔を例題として用いて,鋼材のたわみ検出を行う手法を開発する予定である.電力鉄塔については,既に,電力会社の協力を得て,高密度点群を入手している.また,可能であれば,橋梁についても手法の検討を行う.また,点群から,構成要素となる鋼材を自動抽出する手法についても検討する.また,高精度レジストレーションを実現するために,現実的なメモリ容量と計算時間でレジストレーションを行う手法を検討する. 仮想現実環境で目視検査では,広範囲を計測した大容量点群の高速な描画手法を検討する.高精細な点群をすべてメモリ上に展開して持っておくことはできないので,詳細化のための差分データをコンパクトな表現で保持しておき,必要な部分のみを詳細化する手法を検討する.また,検査においては,現場において,仮想環境との照合を行いたいというニーズが強いことがわかった.AR への展開の可能性についても検討する. 自動計測ロボットについては,まず,移動ロボットの防振対策について検討を行う,実装する.点群ベースの経路探索を行い,自律的に移動するシステムを開発する.多数の機器が設置されている工場などを漏れなく計測することは一般には難しく,未計測のエリアの発生が避けられない.そこで,未計測エリアの計測によって最短経路を改善する仕組みについて検討する.また,移動ロボットが計測位置を適切に決定する手法について検討を行う.
|
Causes of Carryover |
物品費が当初予算をオーバーしたため,旅費を別予算で支出した.そのため,差し引きで差額が生じることとなった.次年度使用額については,国際会議での発表件数が当初計画より多くなる見込みのため,そちらの費用として用いることを計画している.
|