2019 Fiscal Year Research-status Report
脊椎動物・節足動物比較によるウイルス感染制御コアネットワーク探索
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17KT0045
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松野 啓太 北海道大学, 獣医学研究院, 特任講師 (40753306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 剛士 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 客員研究員 (70709881)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | アルボウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物由来・節足動物由来の各培養細胞に節足動物媒介性フレボウイルス(そのうち1つはリバースジェネティクスで作出したリフトバレー熱ウイルス)を感染させ、感染後24、48、96時間後にRNAを抽出した。このRNAを用いてトランスクリプトーム解析を行い、コアネットワークの抽出と各宿主因子の機能解析を行った。また、重症熱性血小板減少症ウイルス(SFTSV)を感染させた細胞を可溶化し、ウイルスの構造タンパク質の1つであるNタンパク質に対するモノクローナル抗体を用いて免疫沈降を行い、SFTSV Nタンパク質と共沈する宿主タンパク質および宿主RNAを解析した。その結果、SFTSV感染細胞において、ウイルスの増殖に関与すると推定される複数の宿主因子を同定した。 次に、SFTSVのM分節RNAのうち膜タンパク質のORFの大部分をルシフェラーゼ遺伝子に置換したミニゲノム発現プラスミドを作成し、SFTSVのRNAポリメラーゼとNタンパク質を強制発現した細胞においてウイルスRNAの複製・転写の効率を検出できるミニゲノム系を作出した。このミニゲノム系を用いてウイルスの増殖に関与すると推定された上記の宿主因子の遺伝子発現をsiRNAを用いてノックダウンし、ミニゲノム系に与える影響ならびにウイルス増殖に与える影響を測定した。その結果、これらの宿主因子のうち少なくとも3種の遺伝子の発現がSFTSVの増殖に正の影響を与えることが明らかとなった。 以上のことから、ネットワーク解析を利用して節足動物媒介性フレボウイルスの増殖に重要な宿主因子を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度(令和元年度)の研究実施計画での計画に従い、ネットワーク解析を実施した。トランスクリプトーム解析ならびにインタラクトーム解析の結果から、節足動物媒介性フレボウイルスの増殖を正に制御する(つまり、ウイルス増殖に利用されている)宿主因子を見出すことができた。培養細胞やウイルスのリバースジェネティクス系の樹立も、一部の遅れを除いて概ね計画通りに進行しており、ツール作成と収集も最終年度に向けて進展している。また、遅れているSFTSVのリバースジェネティクス系についてはミニゲノム系や感染性ウイルス粒子発現系を樹立し、代替法による解析を実施できる体制を整えることができた。そのため、総合的に自己評価を行ったところ、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞系でウイルス増殖を著しく促進あるいは抑制することが明らかとなった宿主因子について、研究期間内で利用可能な実験動物(マウスあるいはハムスター)を用いて脊椎動物でのウイルス増殖への影響を確認する。さらに、節足動物を用いても同様の確認をする。ここで用いる節足動物は、蚊は連携研究者(北海道大学・大場)、マダニは連携研究者(中尾)の協力のもと、飼育下のあるいは野外で採集した個体である。 最後に、ここまでで脊椎動物・節足動物双方でフレボウイルスの増殖効率を著しく変化させることが実証された宿主因子が、フラビウイルスの増殖に与える影響を調べる。フラビウイルスはプラス鎖一本鎖の非分節型RNAをゲノムに持つウイルスで、マイナス鎖一本鎖の分節型RNAをゲノムに持つフレボウイルスとはゲノム構造が大きく異なる。フラビウイルス属のウエストナイルウイルスあるいは日本脳炎ウイルス(いずれも蚊媒介性)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(ダニ媒介性)を用いることで、フレボウイルスの研究で得られた成果を蚊・マダニ双方の系で検証する。
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Causes of Carryover |
インタラクトーム解析の一部について、本年度中に実施できず、次年度に解析することとしたため。
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