2019 Fiscal Year Research-status Report
対話合成実験に基づく,話の面白さが生きる「間」の研究
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17KT0059
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
定延 利之 京都大学, 文学研究科, 教授 (50235305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20347785)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 対話 / 間 / 面白さ / 音声 / スピーチアクト / 状況 / コミュニケーション / スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、現実の日常的な音声言語コミュニケーションにおける発話の規則性を、いわゆる「流暢な」発話だけでなく、「非流暢な」発話にもわたって具体的に明らかにする作業を通じて、発話のとぎれ(無音区間)というものが実は空虚な「真空」ではなく、社会文化的に濃密な意味を持つものであることを示した。それはとぎれだけでなく、発話の延伸においても同様であり、話し手の発話タイミング(「間」)のごく小さなずれが、コミュニケーションにおいて重要な意味を持つことを見た。 本研究課題は話の面白さを具体的な突破口とした「間」の研究であり、そのために、話の面白さに関する研究も展開したが、現段階で我々が予想するところでは、本研究が最終的に明らかにする知見は、話の面白さと直接的に結びついた形はしていない。面白さは、発話タイミングというものがもたらす、より抽象的・一般的な意味から、語用論的な推論を経て醸し出されるものである。より具体的に言えば、本研究で明らかにされる知見は、発話の「面白さ」だけに通用するものではなく、発話の「丁寧さ(ポライトネス)」の分析にも利用可能な、一般性の高いものである(そうでなければならない)。丁寧さに関する従来の言語研究も、微妙な発話のタイミングを度外視したところで展開されているので、本研究は発話のポライトネスの研究文脈においても意義を持つものであろう。本年度は、そのような一般的な知見の姿を裏打ちする、「面白い発話」にかぎらない発話全般について、基礎的な考察をおこなったことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、対話データの収録実験が一部できず、予定していた実験に踏み込めなかった点が惜しまれるが、「やや遅れている」と言うほどのものではない。今年度に全体的な基礎枠組みを定めることができ、予定より広い視野からのアプローチが可能になったことは、それを補って余りある成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大につき、実験参加者にはインターネットを通じて刺激を提示する遠隔実験の形を工夫する必要が生じている。本研究課題は微妙な発話タイミングを考察対象としているだけに、個々の実験参加者の受信状況(パソコンの処理速度など)に影響されることのない形での実験を慎重に遂行し、結論を得たい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額203,896円が生じた理由は、新型コロナウィルスの感染拡大のため、国内外の研究集会への参加を中止せざるを得なかったことである。引き続き2020年度も、国内外への出張のための経費は減ることが予想される。2020年度は、これらを、テレワークによる人件費へと転用することによって、新型コロナウィルスの影響を最小限に抑え込んだ研究と成果発表を実施したい。
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Remarks |
(2)は「わたしのちょっと面白い話」コンテストへのエントリー作品で構成されるコーパスである。軽薄なものを想像されるかもしれないが、実態はそのwebページにも断られているようにきわめて学術的なもので、このコーパスについては論文、国際学会での発表、論文集も出版されている。
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Research Products
(17 results)