2017 Fiscal Year Research-status Report
Risk changes by age on disasters, water resources, food resources, and air pollution caused by climate change and their adaptation measures
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17KT0066
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安成 哲平 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70506782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 朋人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (10554959)
成田 大樹 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50746485)
増冨 祐司 茨城大学, 農学部, 准教授 (90442699)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 森林火災 / 大気汚染 / 気候モデル / 灌漑 / 陸面モデル / 農作物 / 経済評価 / 環境経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、森林火災発生予測高度化に向けた解析、陸面モデル関連の開発、及び環境経済関連の分析を進めた。 森林火災発生予測高度化に向け、2003年以降の北海道への越境大気汚染と関連した3事例の森林火災解析を進めた。これら3事例は、東ユーラシアで年明けより平年に比べた乾燥化、火災数ヶ月前の少雪状態(早期融雪)及び地上付近の昇温が見られた。結果として、乾燥状態が長期化し、大規模森林火災が発生しうる気候・環境状態が形成されていた(Yasunari et al., 2018)。 また、シベリア域の森林火災発生と気候・環境変数の時系列データ(時間ラグデータ含む)に対して重回帰分析を行い、森林火災発生とこれらの変数の関係性を見出した。これらにより、森林火災発生数ヶ月前の気候・環境状態の考慮が森林火災予測には重要だとわかった。 モデルの開発状況は以下の通りである。既存陸面モデルにMATCROの結合を行った。MATCROの高精度化および高速化を行った。高精度化では、光合成速度の計算式・パラメーター値をMATSIRO既存のものから、実験で得られた式・パラメーター値に変更し、より高精度の光合成速度計算が可能となった。また高速化では、光合成速度の計算の際に、時間の掛かっていた繰り返し計算を、解析的な式に置き換え、光合成速度の高速計算が可能となった。 灌漑活動を考慮した全球気候モデルでは、灌漑の有無による地表面ならびに地表面付近の水文諸量への影響を評価し、同モデルの陸面過程のみを扱うオフライン実験結果や既存の研究との比較を行った。また、同モデルによる地下水汲み上げ量についても観測結果との検証を実施した。 環境経済分析では、翌年度以降の数値シミュレーション分析のための準備として、水資源(灌漑)の入手可能性の度合いや農作物収量の評価計算を経済評価に結びつけるための分析のアプローチについて検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、陸面サブモデルの結合を行うことを主な課題としていてるが、当初の年度計画に書いたように、この特設分野研究は数ヶ月遅れて研究課題が内定し開始されるため、上記課題が次年度にまたがる可能性で元々検討しているため、年度内に完了しないことを当初から可能性として想定している。作物成長モデル(MATCRO)の結合までは大方完了して、現在モデルの検証を行っている。灌漑モデルにおいては、現在モデルは入手できたものの、上記結合モデルには反映するまでには至らなかったが、現在MATCRO結合バージョンをメインとしつつ灌漑モデルの要素を入れられる部分で入れていく方向で考えているため、メインのMATCROをだいたい結合できたので、メインの課題はおおかた順調に進んだと判断できる。 また、森林火災発生予測の高度化のための発生要因分析においては、今後の高精度化につながる非常に素晴らしい成果が得られた(Yasunari et al., 2018)。また、その後の更なる解析において、シベリア域においては、大規模森林火災発生予測に関わる気候・環境変数とそれらの時間ラグ考慮などの重要性が重回帰分析で見出せたものの、他の地域にそのまま適応できるかなどはさらなる検討が必要である。結論としては、これらの知見を気候モデルにスキームとして導入するするにはまだ考慮すべきことが多いことがわかった。しかしながら、これらの結果を元に、森林火災発生量変動における大気汚染については、下記に述べる代替の方法で評価をする方向へ転換することにしたため、研究の進捗状況としては問題はないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
森林火災と大気汚染の関係のスキーム化にはまだいくつかステップが必要なことがわかり、気候モデルへのスキームとしての導入には時間がかかると判断された。そこで、代わりに今後の森林火災発生量変動による大気汚染変動とその影響の評価においては、開発版モデルとは別に感度シミュレーション(森林火災を現在よりも増加させるなどの仮想実験)、もしくは温暖化シミュレーションデータの環境・気候変数を使った森林火災発生リスクの評価などを行う方向に方針転換をすることとした。また、引き続き森林火災発生とそれに伴う大気汚染発生予測の高度化に向けた解析も引き続き進める。 MATCROを導入した陸面モデルは引き続き高度化・検証を行い、これを主体として進める。次年度は全球のオフライン(大気と結合なし)でのシミュレーションを行って結果を解析を行う。また、灌漑モデルは、MATCROと重なる要素もあるため、MATCROに取り入れられる(取り入れるべき)部分の選定と導入を目標として取り組んでいくこととする。最終年度に、大気との結合で温暖化時のシミュレーションを行うことを目標とする。 環境経済的観点からの分析においては、昨年度に引き続き、数値シミュレーション分析のための準備としての経済評価手法の検討を進める。また、その過程において、特定の地域問題をを対象として(例えば、ロシアの森林火災等)モデル評価結果と実際の経済データを関連づけるケーススタディーについて検討する。
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Causes of Carryover |
北海道大学の代表者および分担者は大方予定通り経費を使用したが(若干繰越分あり)、学外分担者で未使用分があると報告を受けており、これらの繰越分と北大側の若干の繰越分があることにより差額が生じた。繰越分も含めて次年度の予定と合わせて、研究課題の必要経費に合わせて使用する。
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Research Products
(8 results)