2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17KT0093
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 反応動力学 / ポテンシャルエネルギー曲面 / 遷移状態分光 / 光電子分光 / 非断熱遷移 / 波束動力学 / スピン反転 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究活動における大きな進展は、スピン軌道相互作用を含めた反応経路探索の方法を開発したことである。スピンが反転するスピン禁制反応では、2つのポテンシャル曲面の非断熱遷移の場所が反応の遷移状態になり得る。本研究で開発した有効ハミルトニアン行列法を用いると、スピン反転経路を比較的簡単に見つけることができることが分かった。この方法をスピン反転を伴う遷移金属を含んだ触媒反応に応用した。具体的には、遷移金属の一価イオン(9種類の3d遷移金属原子:Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu)とOCSの反応について、自動反応経路探索計算を行い、スピン反転が起こる分子構造とエネルギー障壁について考察した。これらの反応はCS結合の活性化を含んでおり、生物学上でも重要な反応である。計算の結果、遷移金属イオンのスピン多重度の異なるエネルギー準位差とスピン反転エネルギー準位に強い相関があることを見出した。また、スピン反転を起こす分子構造は遷移金属の種類にほとんど依存しないことも分かった。 次に、より複雑な化学反応であるニオブ原子とエチレンの反応へと展開した。これは、金属原子によるCH結合活性化に関連した有機化学分野でも重要な反応である。計算の結果、複数のスピン反転経路を見出し、これまで提唱されていた反応経路とかなり異なることを見出した。 以上の結果をジャーナル論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スピン反転を含む反応経路探索法を開発したことで、単純な気相化学反応を超えて、よろ複雑な触媒反応にまで展開できるようになった。これにより、通常の遷移状態概念を超えて、スピン反転を含む遷移状態概念を構築できる可能性があることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針の一つは、スピン反転を含む反応経路探索計算をさらに複雑な無機化学・有機化学反応へと展開することである。これまでの研究結果から、スピン反転が重金属原子を含む触媒反応の機構で極めて重要な役割をしていることが徐々に分かってきた。すなわち、なぜ特定の分子が特定の反応において触媒として機能するのかについて理解が進みつつあると考えられる。このことをより一般的な触媒化学の問題としてとらえるためには、よく知られた有機反応・無機反応への展開することが急務であり、積極的に進めていく計画である。 もう一つの方針は、スピン反転する場所、つまりスピン反転によってできる遷移状態構造をどのように直接観測できるかを探ることである。これは分子アニオンを利用した遷移状態分光の拡張で探ることを進めていく。
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Causes of Carryover |
年度内に必要な物品はすべて購入できた。そのため、少額の差額を次年度に回したため。
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Research Products
(13 results)