2019 Fiscal Year Research-status Report
感染症対策における人の国際移動の管理:国際関係論と理論疫学による学際的研究
Project/Area Number |
17KT0119
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小松 志朗 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40507109)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 雄介 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, AMR臨床リファレンスセンター, 主任研究員 (70779991)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 感染症 / 人の国際移動 / 渡航制限 / 資源の再配分 / 学際的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、グローバルな感染症対策における人の国際移動(航空機による移動)の管理の課題と、その解決策を明らかにすることである。今年度は2009年の新型インフルエンザA (H1N1) の事例を中心に研究を進めて、以下の点を明らかにした。 疫学の観点からすれば、渡航制限は効果の限られた措置であるため、有効な感染症対策の実現には渡航制限と他の措置を組み合わせる複合的なアプローチがカギになる。そして、渡航制限以外の各種措置(検査、隔離、抗ウイルス剤など)は物資や人員といった資源が多く必要となるため、途上国には実施のハードルが高い。従って、複合的なアプローチをグローバルに適用するのであれば、国際的な資源の再配分が重要になる。 渡航制限については、以上の点を踏まえて改めて活用方法を考え直す必要がある。渡航制限の効果は限定的であるにせよゼロではなく、感染症の輸入を一定日数は遅らせることができる。その効果を実態に即して細かく知ることが、他の措置との組み合わせを考えるときの前提となる。ところがこの点に関して、疫学には実証データが不足しており、解析手法も未発達である。従って、感染症対策としての渡航制限に疫学的な不確実性が残ることは避けられない。それを踏まえたうえでなお有効な対策を実現するための方法を、疫学と国際関係論にまたがる学際的な視点から考えることが、本研究の今後の主な課題になる。 また、今年度の終盤になって新型コロナウイルスのパンデミックが発生したことを受けて、試験的にこの事例の研究にも着手した。具体的には、日本政府とドイツ政府が行ったチャーター便による武漢在住の自国民の救出に焦点を当てている。この新事例を本研究にどう取り入れるかは、次年度のはじめに改めて検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主な理由のひとつは、ここまでの研究成果をまとめて学会報告を行うなかで、データの収集・解析などの面で新たな課題がいくつか見えてきたため、研究計画の再検討や修正が必要となったからである。また、研究分担者の所属機関が年度の途中で変更した影響で研究や打ち合わせの時間を十分に確保できなかったことも、進捗の遅れにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は予定より研究期間を1年延長し、次年度が最終年度となる。当初の研究計画では2009年の新型インフルエンザと2014年のエボラ出血熱の2事例を研究対象としていたが、新型コロナウイルスの事例を追加することを検討する。 研究方法のひとつとして、国内外の専門家や政府関係者、国際機関の職員を対象とするインタビュー調査を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で出張が難しい状況が続けば、オンラインや電話での調査に切り替えることも検討する。 同じように代表者と分担者の打ち合わせも、今後の状況次第ではオンラインや電話で行うことが多くなるものと考えている。
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Causes of Carryover |
【理由】当初の予定より研究期間を1年延長し、最終年度にインタビュー調査を集中的に行う計画に変更したことが、主な理由である。また、資料に関していえば、今年度は購入費がほとんどかからない学術論文や一次資料を重点的に収集した一方、図書の購入が少なかったことも理由として挙げられる。
【計画】予算の多くを国内外でのインタビュー調査の旅費に充てる予定である。ただし、新型コロナウイルスの影響で出張が難しくなった場合には、図書・物品購入費など他の使用目的への振り分けを検討する。あるいは、国内外の感染状況によっては、海外出張よりも国内出張の比重を大きくするという選択肢もある。
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Research Products
(4 results)