2019 Fiscal Year Research-status Report
社会的ヘテロフォニーとしての漫才対話~オープンコミュニケーションの超分節性の解明
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17KT0143
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岡本 雅史 立命館大学, 文学部, 教授 (30424310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪田 真己子 同志社大学, 文化情報学部, 教授 (10352551)
細馬 宏通 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90275181)
大庭 真人 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 研究員 (20386775)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 漫才対話 / オープンコミュニケーション / インタラクションリズム / 相互調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度収録した漫才対話の音声・映像データの整備とマルチモーダル分析を進めるとともに、様々な日常相互行為場面との接合可能性を検討した。データ整備については研究代表者岡本が中心となり、指導する大学院生を研究協力者として雇用して着実に進めており、最終年度となる次年度に完成される予定である。一方、マルチモーダル分析については、収録した人間同士による漫才対話と人間-ロボット漫才対話の比較分析を通じて、漫才における発話リズムや身体動作の相互調整プロセスの解明を図った。こうした発話や身振りの相互調整は、漫才以外の相互行為場面にも妥当する分析観点であるため、多種多様な相互行為場面の観察から得られる知見が重要となる。 そこで、代表者岡本は、散文テキストの対話変換実験に基づき、仮想的相互行為とオープンコミュニケーションの相互関係の一端を明らかにした。その成果は第15回国際認知言語学会において報告された。さらに、漫才対話の音声分析を通じて「対話の一体感リズム」の修復メカニズムの解明に取り組み、その成果を第44回社会言語科学会で報告した。一方、分担者阪田は、表現者とそれを鑑賞する鑑賞者の相互行為を明らかにする試みとして、歌唱表現に着目し、歌手の身体動作の有無と鑑賞者の鑑賞環境が、演奏意図の伝達や鑑賞後の気分の変化といった音楽的コミュニケーションの過程に与える影響を調べる実証実験を行った。この分析結果は最終年度に学会報告や論文投稿の予定である。分担者細馬は、相互行為場面としてのじゃんけんに着目し、発声に伴う身体的身振りが参与者間で相互調整される様態を明らかにし、その成果を第16回国際語用論学会にて報告した。分担者大庭は、脳科学の観点から、文処理前の行為者中心からの視点切り替えによる脳の前頭眼野における賦活が有意に強く観られることを確認した。この成果は次年度に国際論文として公刊予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の中心的課題は、(1)発話や身振りの相互調整メカニズムの解明、および、(2)漫才対話と日常相互行為場面との接合、の2点であったが、それに加えて (3)研究アプローチや分析手法のアウトリーチ活動、にも各人が取り組んだ。 (1)(2)に関しては、予定されていた新規の漫才対話収録はできなかったものの、上記の概要に記したとおり、一定の成果を上げることができたと考える。一方、(3)については、代表者岡本が依拠する研究アプローチの「認知語用論」を『認知言語学大事典』の1節として、分担者阪田がお笑い研究の計量分析手法を『文化情報学事典』の1節として、それぞれ担当執筆し、本年度中に公刊された。また分担者細馬も微視的相互行為分析ツールであるELANの解説書である『ELAN入門』を著したことから、こちらも十分な成果があったと考える。以上を鑑み上記の評価とする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要にも記したように、最終年度である2020年度は、収録済みの漫才対話の音声・映像データ整備を完成させるとともに、これまでの研究を通じて浮かび上がった《インタラクションリズム》という新たな概念を精緻化し、漫才対話のみならず日常相互行為場面において言語・音声・身振りなどが協調して構築される様態を詳らかにすることを目指す。そして、これまでの成果報告の場としてシンポジウムの開催を予定している。 しかしながら、本研究課題開始当初に予定されていた新規の漫才対話データ収録、および音声データとモーションキャプチャデータに基づく表現モダリティの変調実験は、現時点でも完全なる収束が期待できない新型コロナ禍の影響により、断念せざるを得ない見込みである。また、上記の研究実施や公開シンポジウムの開催等もオンラインで行わざるを得ない状況であるため、場合によっては今年度内の予算執行に支障をきたす恐れがある。したがって、次年度への計画延長も視野に入れつつ、充実した研究成果を上げるべく適宜研究計画を変更しながら進めていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額に関しては、2019年度末から世界的に発生した新型コロナ禍により、年度末に予定されていた複数の学会参加ならびに研究会合参加のための出張が延期ないしは中止されたため、研究協力者分も含めた旅費・参加費として約23万円の予算を次年度に繰越す形となった。したがって、2020年度に未実施分の出張旅費およびデータ整備に関わる謝金として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Book] ELAN入門2019
Author(s)
細馬 宏通、菊地 浩平(編)
Total Pages
288
Publisher
ひつじ書房
ISBN
978-4894767652