2006 Fiscal Year Annual Research Report
科学コミュニケーションにおけるメディアの影響と役割--実態調査とモデルの提言--
Project/Area Number |
18018010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐倉 統 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (00251752)
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Keywords | 科学コミュニケーション / メディア研究 / 科学技術と社会 / 情報社会論 / 知識流通 |
Research Abstract |
マスメディアは科学技術をどのように表現しているのか?この問題を明らかにするために、今年度はテレビ番組と科学映画に注目した。まずNHKスペシャル14本における遺伝子やゲノムなどの描かれ方を分析し、制作者にインタビューをおこなった。その結果、テレビの目指しているところは、特定の科学的知識を持たない視聴者が1回見ただけで理解できるように科学的知識を「加工」することであることが明確になったが、実際には民放のある番組のように、「視聴者のため」を標榜しつつ、実は「番組制作者の都合」や「思いこみ」が優先されている事例がしばしば見られる。これは、制作者が意識的におこなうこともあるが、無意識にそのようなバイアスがかかっていることも多い。番組制作過程をどのように改良するかという問題もあるが、科学者の側としては、テレビ番組作成の制約条件(資金の制限、制作時間の短さなど)を十分考慮した上でテレビ番組と関わる必要があろう。また、日本の科学映画を対象に、その歴史を洗い直し、テレビとは反対に高度な科学リテラシーを持った視聴者層のみを対象に、芸術的とすらいえるこだわりを持ち続けた制作者たちの意識を浮き彫りにした。これらの「こだわり」を、現代社会のマスメディアにどのように取り入れるか、今後の課題といえる。また、保存の体制が整っていないことも大きな問題である。それに関連して、各種上映会やセミナーなどをおこない、科学映画の普及と再生に実践的にも取り組んでいる。
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Research Products
(4 results)