2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経ネットワークにおける相関のある発火状態と機能の関係
Project/Area Number |
18019019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青柳 富誌生 京都大学, 情報学研究科, 講師 (90252486)
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 情報工学 / 数理モデル / 同期 / 力学系 / アトラクター / ベイズ統計 |
Research Abstract |
近年の生理学実験から、神経ネットワークの発火の相関が視覚刺激の情報統合や注意の切り替え等の高次機能に重要な役割を果たしている可能性が示されている。これまでは、現時点で系統的な数理モデルの研究があまりない、発火相関の神経ネットワークにおける機能的役割に焦点を当て研究を進めてきた。その結果、STDP学習を行う神経ネットワークを理論および数値計算により解析した結果、一時的な一様同期入力をネットワークに加えると学習時に見せたパターンの順番に従いアトラクターの遷移が起こるSynchrony induced switching behaviorが見られた。これは力学的には、非同期的入力のときのアトラクター間にある学習時に獲得した弱い因果関係を反映した遷移のルートが、同期的入力を受けることで活性化したものと解釈できる。さらに、同期入力のタイミングに応じて遷移先を複数のパターンにすることも可能であった。このことから、Synchrony induced switching behaviorは文脈依存で行動を学習する場合の神経基盤となり得るメカニズムである。また、上記の結果は、ある特定の一定スケールの同期発火やスパイクのコヒーレンスが、神経活動の機能、例えば状況の変化に対する内部状態の変化や行動発現などに重要な可能性を示唆している。そこで、実データを用いてその可能性を探った。具体的なデータとして、ネズミに条件付け弁別課題を学習させ、その後課題遂行中の海馬CA1から記録したマルチスパイクデータを用いた(京都大学文学研究科 櫻井芳雄先生のデータ)。ネズミは提示刺激に応じて、左右のいずれかの窪みへ鼻を入れることで、正答であれば報酬の餌が与えられる。その結果、例えばカーネルを用いたk means clustering法を用いた結果、適切な時間スケールを取った際に、ネズミが左右どちらを選ぶのかを比較的高精度で予想ができる場合があった。この結果は、脳の情報表現において、適切な時間スケールの同時計測したスパイクパターンが重要であることを示唆しており興味深い。ただ、現時点ではデータ数が少ないという問題点があり、さらなる実験が必要である。
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Research Products
(3 results)