2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18020035
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
入来 篤史 独立行政法人理化学研究所, 象徴概念発達研究チーム, チームリーダー (70184843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡ノ谷 一夫 独立行政法人理化学研究所, 生物言語研究チーム, チームリーダー (30211121)
熊澤 紀子 独立行政法人理化学研究所, 象徴概念発達研究チーム, 研究員 (30435648)
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Keywords | 好奇心 / 齧歯類デグー / 道具使用学習 / 訓練過程の定量化 |
Research Abstract |
「好奇心」とは、新たな経験を求める行動傾向を表出するための、内発的な動機付けの要素とされる。しかし、好奇心を定義することは困難で、その神経科学的メカニズムについての研究はこれまで皆無であったと言って良い。齧歯類デグー(Degu ; Octodon degu)の手掌根部には手指と対向する親指状の突起があって、細草茎を把持するなどの高い手技巧緻性を発揮するので、道具の使用能力を有する可能性があると予想された。齧歯類ではこれまで類例の無い道具使用学習が、この動物に特徴的に発現する「好奇心」に由来するとの仮説に基づいて、道具使用を触発する脳内機構を検証することが本研究の最終的な目的である。そこでまず、齧歯類デグーが前肢による熊手状の道具使用を習得する能力のあることを確認し、好奇心のメカニズム探索の新モデル動物として確立することを試みた。 熊手状の道具を使用して手の届かない遠方のエサを引き寄せて捕食するという訓練を、6匹のデグーを用いて約90日間行なったところ、訓練は装置馴致後、まずは熊手のすぐ手前に報酬(ヒマワリの種)を置き、手元に引き寄せるという訓練を行なった(Level1)。次に、熊手と報酬の距離を徐々に左右へ離していき(Level2)、最終段階では報酬を熊手の先端より外側に置く(Level3)というように訓練を行なった。その結果、Level2および3の条件でも全個体が熊手の操作で報酬を得ることが可能になり、その訓練課程の定量化により齧歯類の道具使用学習のモデル系の確立に成功した。 さらに、デグーは色と大きさが異なる新規の熊手を用いても訓練時と同様に使用する事が可能であったことから、デグーが熊手を報酬獲得のための道具として機能的に認識しているのではないかと考えられ、齧歯類には希有な高次認知機能を習得することが確認できた。
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Research Products
(1 results)