2006 Fiscal Year Annual Research Report
分子性導体の新奇圧力誘起量子相転移の探索と高圧交流比熱法による精密圧力相図の決定
Project/Area Number |
18028009
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
辺土 正人 琉球大学, 理学部, 助教授 (00345232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上床 美也 東京大学, 物性研究所, 助教授 (40213524)
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Keywords | 高圧下電気抵抗 / 圧力誘起超伝導 / 有機導体 / TMTTF塩 |
Research Abstract |
今回我々は(TMTTF)_2SbF_6の特異性の検証のために、unit cellがPF_6塩よりも大きく、SbF_6塩より小さなAsF_6塩を、キュービックアンビル高圧装置を用いてこれまでと同様な加圧実験を行った。まず、この塩でも圧力誘起超伝導相は存在するのか?という疑問もあった。また、もし存在するなら、従来型のPF_6塩と同様な結果になるのか、SbF_6塩と同様またはPF_6塩とSbF_6塩の中間的な結果が得られるのか興味を持って、検証した。他の塩と同様に常圧では200K付近でのなんらかの相境界と思われる急激な抵抗の増加が観測され、2GPaに加圧すると室温近傍では金属的伝導に変化し、30K付近でMI転移を示した。加圧とともにMI転移温度は減少し、全体の電気抵抗も大きく抑制されていった。4.5GPaでは、超伝導転移の前駆現象と思われる抵抗の急激な減少が2K付近に観測されるようになる。4.65GPaでは、ゼロ抵抗を観測し、それは5GPaまで続いた。しかし、それ以上加圧すると超伝導状態は消失し、10GPaまでの測定で、6GPa以上は全温度領域で金属的伝導状態であった。結果的にAsF_6塩は、臨界圧、超伝導転移温度、超伝導相の圧力領域共に、PF_6塩と同様な結果になった。益々、SbF_6塩の特異性が明らかになったが、前述のとおり、それを明らかにする方法はまだ見つかっていない。その理解のためには、まず、高圧下の各相の詳細を明らかにすることが必要である。そのために、高圧下X線構造解析や高圧下帯磁率測定の準備を進めている。 有機導体の超高圧実験には、高い静水圧性が重要であることは以前に述べたが、それを満たす高圧容器は、キュービックアンビル高圧装置である。しかし、加圧部が約60kgもあり、巨大であるがためにその熱容量が非常に大きく、低温にするのはかなり難しい。現在のところ2K程度が限界である。しかし、圧力誘起超伝導体の探索や超伝導特性を調べるには、より低温が必要になるケースが多い。我々は、超高圧低温実験用に、従来のキュービックアンビルセルに対して、使用するガスケットサイズは変えずに、重量比で16分の1の手のひらに載る「Palm-Cubicアンビルセル」の開発に成功した。8GPaの圧力発生も確認している。その小型キュービックアンビルセル用の循環型^3Heクライオスタットを開発し、最低温度0.58Kを長時間維持することに成功した。今後、この装置を用いて、超伝導探索や高圧下比熱測定などを進めていく予定である。
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Research Products
(6 results)