Research Abstract |
申請者らはこれまでの研究において,Rh(I)錯体によるヒドロアシル化反応-環化異性化反応を組み合わせたカスケード型環化反応を開発し,本カスケード型反応を鍵工程とした天然物(±)-Epiglobulolの全合成にも成功している.しかし,本カスケード型環化反応が進行する基質は現在までのところ一例のみであり,基質一般性に関する知見が全く得られていない.そこで本年度は,様々な基質を用いた環化反応を検討し,環サイズの異なる多環式化合物の合成にも適用可能であるか検討した.その結果,6員環を組み込んだ基質においても本カスケード型環化反応は進行し,Guanacastepene類に見られる5-7-6の3環性骨格の構築にも適用可能であることが分かった.また,この反応系においては基質の側鎖の立体化学が重要であることも明らかとした.すなわち,6員環に接続しているアルデヒド部位とテトラエン部位がcisの関係である場合,反応は立体選択的に進行し,5-7-6の3環性化合物が得られるのに対し,transの関係にある場合は1段階目のヒドロアシル化の反応の際の化学選択性が低下し7員環ではなく5員環が生成され,その結果2段階目の環化異性化反応が進行せずに5-6の2環性化合物が生成してしまうことが明らかとなった.また,cisの関係にある基質も系内でtransに異性化し,収率の低下を招いていることが示唆された.そこで,cisの基質に対し異性化を防ぐ目的でMS4Aを添加して反応を行ったところ収率良く5-7-6の3環性化合物が得られることが分かった.Guanacastepene類は抗MRSA,抗VRSA,及び抗インフルエンザ活性を持つことが知られている天然物の一群であり,今後本カスケード型環化反応を用いたGuanacastepene類の全合成研究にも取り組んでいく予定である.
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