2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18066018
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斉藤 真司 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 教授 (70262847)
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Keywords | 時間・空間的不均一ダイナミクス / 二次元赤外分光法 / 分子シミュレーション / 多時間相関関数 / 不均一性の寿命 / 水 / 複素比熱 / エネルギー緩和 |
Research Abstract |
本研究では凝縮系の運動を理解することを目的に、時間・空間的不均一ダイナミクスにおける揺らぎと緩和機構の解明を進めてきた。とくに、多時間相関関数による過冷却液体の不均一ダイナミクス、多時間応答関数により表される三次非線形赤外分光法により氷の分子間ダイナミクスの解析を行った。 多時間相関関数による過冷却液体の不均一ダイナミクスにおいては、これまで高次非線形分光法の解析に利用してきた多時間相関関数のアイディアを相関した運動の密度場の三時間相関関数に用い、動的不均一性の解析を行った。とくに、相関関数の体積のt_2依存性から動的不均一性の寿命τ_<herero>を求めるとともに、τ_<herero>の寿命の温度変化を調べたところ、液体状態に近い状態ではτ_<herero>とτ_αは同程度であるが、温度が低下していくとτ_αの遅延化以上にτ_<herero>が急激に遅延化していくことが明らかになった。多時間相関関数を用いた本解析により、従来の相関関数では平均化され潜在していた非一様で遅い相関した運動を明らかにした。 また、氷に対する三次非線形赤外分光法、とくにポンプ-プローブシグナルの計算を行い、氷における分子間ダイナミクスの解析を行った。その結果、構造が拘束されている氷においては、外場により励起された衡振運動のエネルギーはまず衡振運動の自由度内で緩和し、その後、衡振運動とO-O-O変角運動の間の非調和カップリングにより、分子間並進運動へと緩和されることが明らかになった。液体の水と氷における分子間エネルギーに関して、緩和時間のみならず緩和経路も異なっていることを本研究により明らかにした。
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Research Products
(40 results)