2006 Fiscal Year Annual Research Report
年縞の分析による年単位の環境史復元と稲作漁労文明の興亡
Project/Area Number |
18100007
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
安田 喜憲 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (50093828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 隆夫 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (70115799)
笠谷 和比古 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90124198)
福澤 仁之 首都大学東京, 都市環境学部, 教授 (80208933)
竹村 恵二 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (00201608)
林田 明 同志社大学, 理工学部, 教授 (30164974)
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Keywords | 年縞 / 年単位の環境史 / 稲作漁労文明史 / 一の目潟 / カンボジア / プンスナイ遺跡 / アンコールトム / 環境考古学調査 |
Research Abstract |
1.平成18年11月-12月には、秋田県一の目潟の水深45mの湖底にボーリングを実施し、30mの連続した年縞堆積物を採取することに成功した。C14年代測定の結果、一の目潟の年縞は過去3万年間の環境史を連続的に記録保存していることが明らかとなった。年縞堆積物にはアカホヤ火山灰さらには姶良火山灰などの広域テフラも含まれており、他地域との広域的な対比を行うことも可能となった。堆積学的分析から、一の目潟で発見された連続した縞状堆積物が1年に1本ずつ形成される年縞であることが確認できた。年縞の顕微鏡による枚数計測のためにスライドを作成し、機器分析、花粉分析・珪藻分析・古地磁気分析・プラントオパール分析・大型植物遺体分析などに着手した。分析にはフィンランド・ドイツ・ポーランド・イギリスの研究者の協力も得ることになり、年縞堆積物の分配をおこなった。これらの年縞堆積物の分析により稲作漁労文明を興亡させたモンスーンアジアの気候変動や環境変動が年単位で解明できる見通しが得られた。 2.平成19年1月-2月には、カンボジアのプンスナイ遺跡の考古学的発掘調査と遺跡周辺の環境考古学的調査を実施した。プンスナイ遺跡の航空測量によって遺跡全体の地形図を作製するとともに、遺跡内のA-Fの5箇所の考古学的発掘調査を実施した。航空測量によってプンスナイ遺跡は直径3kmの円形の遺跡であり、周囲に環濠をめぐらし、南には港も備えていたことが明らかとなった。発掘調査の結果、プンスナイ遺跡からはカンボジアでは最初の版築による巨大墓が発見され、また合計37基の埋葬墓が発見された。墓からはインドとの交易を物語る大量のビーズ、青銅製品、ガラス製品それに土器が膨大に検出された。埋葬品にはアフガニスタンとの交易を物語るラピスラズリの胸飾りも発見された。さらに中国の長江流域の文化的影響を強く示唆する黒陶土器も発見された。また埋葬された土器の中からは大量の魚の骨が検出され、稲作漁労民は魚を死者とともに埋葬したことも明らかとなった、現在、出土遺物の整理、人骨のDNA分析、遺跡のC14年代測定を実施中であるが、おそらく紀元前1000年ごろにはこのトンレサップ湖の湖畔にインド・中国・チベットなどとの交易を行う稲作漁労民が巨大な都市を形成していた可能性がきわめて大きくなった。平成19年2月にはアンコールトムの環濠と貯水池の環境考古学的調査を実施し、堆積物を採取し、現在分析を行っている。これらの分析によってなぜアンコール文明が崩壊したかの謎も解明できる見通しが得られた。 3.平成18年7月と8月には研究分担者と研究協力者による研究会を京都で開催し、研究打ち合わせと研究計画の立案を実施した。また平成18年11月と平成19年3月の2回、年縞堆積物の分析に関連する国際ワークショップを秋田県において開催し、分析方法の検討、分析結果の検討などを実施し、国際的な情報の発信を行った。
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Research Products
(8 results)