2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本における仏教美術の受容と特定樹種木材の流通に関する研究
Project/Area Number |
18202004
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大橋 一章 Waseda University, 文学学術院, 教授 (80120905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 成市 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30242374)
小野 佳代 早稲田大学, 高等研究所, 准教授 (60386563)
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Keywords | 仏教美術 / 樹種 / 材質分析 / X線分析 / 年輪年代 |
Research Abstract |
本研究の目的は、特定の樹種木材の流通に着目することによって、中国から朝鮮半島を経て日本に伝播した仏教美術がいかなる様相でわが国に受容されたのかを検証することである。本年度は、昨年度入手した国産クスノキの円盤をサンプルとして取り上げ、その年輪に対して蛍光X線分析を行った。手順は、まず円盤の表面を平滑にするために飽掛けを行い、つぎに円盤の樹芯から樹皮へ向かって直線を引き、1センチ間隔で印をつけていく。その印の箇所を狙って、蛍光X線分析を行うというものである。調査には、理研計器株式会社のポータブルX線回折・蛍光X線分析装置XRDF[型式DF-01]を用いた。分析の結果、年輪の心材部と辺材部とでは、KとCaの含有量に違いがあり、とくにCaの値は心材部では大きく変動するが、辺材部では安定した値を示す傾向がみられた。こうしたCaの特徴を利用することで、クスノキの年輪の心材部と辺材部を見分けることのできる可能性が高まったといえよう。今回の調査結果を通して、蛍光X線分析はクスノキの年輪の心材部と辺材部を見分ける手法としては有効である可能性が高く、さらにヒノキやスギといった異なる樹種木材にも応用していくことができれば、年輸年代法の分野への活用が期待できよう。というのも年輪年代法では、調査対象とする木質文化財に心材部が残っているか否かが大変重要であり、もし辺材部が残っていれば、伐採年代により近い年代を導き出すことができるからである。こうした辺材部の有無が重要となる年輪年代の分野において、それを科学的に証明する一手法として蛍光X線分析法を利用できる日も近いかもしれない。これらの調査結果は、2009年9月に開催された国際シンポジウム「文化財の解析と保存への新しいアプローチVI」(早稲田大学奈良美術研究所主催)において発表し、その成果報告として2010年3月に『奈良美術研究』第10号を刊行した。
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Research Products
(10 results)