2007 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解熱力学の創生と蛋白質反応機構の解明への適用
Project/Area Number |
18205002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺嶋 正秀 Kyoto University, 理学研究科, 教授 (00188674)
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Keywords | 熱力学 / 時間分解 / タンパク質 / 反応ダイナミクス / 過渡回折格子 / 反応中間体 |
Research Abstract |
もし短時間にしか存在しない過渡的分子に対しても、その熱力学的性質を明らかにすることができれば、科学全体に対してのブレークスルーになるであろう。ダイナミクスと熱力学から得られる情報を統合することによって、化学反応の理解はより深まるはずである。時間分解熱力学量測定法の完全創生とこの手法を用いた蛋白質反応機構の解明を目的とした新しい検出手法の開発を行い、本年度は以下のような成果を得た。 1.古細菌の光受容タンパク質であるSensory rhodopsin II (SRII)のAsp75を置換した、D75N変異体について研究を行った。従来は必須と思われていたM中間体が欠損した変異体でも生理活性は保たれていること、光情報伝達で重要な役目を果たすトランスデューサーの細胞質側に伸びた部分の構造変化が構造変化していることを時間分解で示すことができた。またトランスデューサーの構造変化は、吸収で見るフォトサイクルが元に戻ってもしばらく残っていることを明らかとした。 2.アポプラストシアニンと言うタンパク質の折り畳み過程における熱力学量を、時間分解で測定した。その結果、折り畳みにしたがって、これまでになく大きなエンタルピー不安定化が起こっていることが明らかとなった。これは、化学反応によってギブズエネルギーが減少すべきであるという原理に基づくと、折り畳みによってエントロピーが大きく増大している事を示し、従来の概念では説明できない事が分かった。 3.熱力学と速度論という2つの大きな分野を融合した時間分解熱力学手法を、植物の持つ青色光センサーであるフォトトロピンに適用した。Phot1LOV2ドメイン単体(LOV2試料)とそれにlinkerを付随させたもの(LOV2-linker試料)を用いて、その反応を研究した。得られた拡散信号の形や強度に観測時間依存性が見出され、光照射により誘起された拡散係数変化を伴う蛋白質全体の構造変化が観測されていると結論した。
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