2006 Fiscal Year Annual Research Report
結晶と磁性のchirality:結晶・磁性・光の統合を目指して
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18205023
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 克也 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40265731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 耕一 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (40177796)
岸根 順一郎 九州工業大学, 工学部, 助教授 (80290906)
秋光 純 青山学院大学, 理工学部, 教授 (80013522)
山口 兆 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80029537)
川上 貴資 大阪大学, 理学研究科, 助手 (30321748)
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Keywords | キラル磁性 / キラル磁気構造 / ジアロシンスキー・モリヤ相互作用 / 不斉磁気光学効果 / キラルヘリカル磁気構造 / キラルコニカル磁気構造 / 分子磁性体 / 加圧下磁性 |
Research Abstract |
井上:本年度はスピン-軌道相互作用の大きな遷移金属イオンを含む新しいchiral分子磁性体を創製することを目標とした。その結果、磁気異方性の大きなタングステンを含む新規キラル磁性体の合成に成功した。この磁性体について、構造解析、詳細な磁気測定を行った結果、より大きな螺旋磁気構造を取っていると思われる結果を得た。この化合物の合成と構造に関する第一報の論文を投稿中である。 秋光:近年、無機系透明chiral磁性体CuB_2O_4も大型単結晶の作成に成功し、磁化の特異な磁場・温度依存性を観測した。この磁化の振る舞いは、岸根らのchiralソリトン格子モデルによって統一的に理解され、chiral磁性体特有の磁化過程を明らかにすることができた。この特異性は、井上らによって発見された分子性chiral磁性体グリーンニードルなどとの強い類似性が指摘されており、特異な磁気光学効果が期待される。この化合物の磁気構造について、中性子線解析、放射光(Spring-8)を用いた磁気散乱の実験を行った。その結果、非常に複雑な磁気相を持つことが明らかになった。また新規無機キラル磁性体としてMnSiの単結晶作成にも成功した。MnSiに関しては、様々な測定を進めている。 菊地:これまで、井上との共同研究によってグリーンニードルの二つの可逆な相転移を見出しており、構造変化と磁気異方性など諸物性関連を解明してきた。グリーンニードルの温度および圧力よる構造変化を調べた結果、加圧下において、新しい相が発現することが明らかとなった。この相について研究を遂行中である。 美藤:これまでキラル磁性体の交流磁化率の精密測定および加圧下での磁化率測定を行ってきた。各キラル磁性体について、交流磁化率における高調波成分の精密測定および解析を集中的に進めた結果、非線形磁化率の巨大応答の詳細を明らかにすることができた。この結果は物性理論の岸根(下記参照)の理論で良く説明され、あわせて論文作成中である。 山口、川上:不斉配位子や結晶構造の低対称性に起因するchiral結晶特有の電子状態をab initio計算により明かにするとともに、物性パラメータを求める。具体的には、グリーンニードル[Cr(CN)_6][Mn{(S)-pnH}(H_2O)]H_2OおよびイエローニードルK_<0.4>[Cr(CN)_6][Mn(S)-pn](S)-pnH_<0.6>、CuB_2O_4を対象として(a)結晶電場の分布、(b)磁気異方性エネルギー、(c)交換相互作用、(d)ジャロシンスキー・守谷ベクトルの計算を行った。また、"Material-oriented Quantum Chemistry"(物性量子化学)に関する国際会議をICQC(量子化学国際会議)のポストコンファレンスとして組織し、研究の情報交換を果たした。 岸根:AB initio量子化学計算の結果を踏まえた磁性結晶のモデルを構築し、実験データの理論的解釈を行う。特に、chiral磁性特有の磁場・温度誘起ソリトン格子形成が磁化過程に及ぼす影響を明らかにした結果、美藤らによる非線形磁化率の応答を説明することができた。
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Research Products
(52 results)