Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 洋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60346038)
笠井 亮秀 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80263127)
中山 耕至 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (50324661)
白山 義久 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60171055)
深見 裕伸 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (50402756)
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Research Abstract |
最終年度(平成20年度)には,以下の3項を重点に研究を進めた.その要約を記述する. 1) 有明海筑後川河口域における高濁度水塊の動態解明:筑後川河口域の高濁度水を形成する粒状有機物の動態は,主に潮差(小潮-大潮)と河川流量の変動によって支配されていることが明らかになった.春季の小潮時には濁度が低下して,植物プランクトンが増殖するのに対し,大潮時には大量のデトリタスを含む高濁度水が形成される.一方,夏季には出水の影響が大きく,出水とともに高濁度水は沖に流されるが,出水後には高濁度を発達させながら上流へと移動する.C/N比と炭素安定同位体比を指標にその起源を調べたところ,春季には植物プランクトンと陸上植物に由来していたが,夏季にはほぼ植物プランクトンのみに由来していた. 2) 韓国西岸Guem川河口域における物理環境の季節変化:Geum川河口域においては,河口から約8km上流に位置するダムからの放水が物理構造に重大な影響を及ぼしており,短期集中型の放水が行われる夏季には,河口域全体が淡水化し,濁度が著しく上昇するのに対し,放水が少ないその他の季節には,河口域全体の塩分が10以上に上昇し,成層が進む様子が観測された. 3) 有明海固有種エツと韓国西岸産エツの遺伝的関係:エツは中国-韓国沿岸および有明海に分布するが,有明海と大陸沿岸の個体群の種の異同については定まっていない.そこで,遺伝的比較により両個体群の関係を推定した.有明海および韓国西岸から計105個体を分析に用い,ミトコンドリアDNA調節領域の前半部を調べたところ,両個体群ではハプロタイプ多様度,ミスマッチ分布が異なるほか,群間の固定指数が大きく,それぞれの個体群に固有のハプロタイプも多く見出された.このため,有明海の個体群は大陸沿岸の個体群からは長期間独立して存続していると考えられた.
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