2009 Fiscal Year Annual Research Report
南米パタゴニア氷原における氷河変動のメカニズムの解明と完新世古環境の復元
Project/Area Number |
18251002
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安仁屋 政武 University of Tsukuba, 名誉教授 (10111361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 浩之 北見工業大学, 工学部, 教授 (00213562)
青木 賢人 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (30345649)
堀 和明 名城大学, 理工学部, 准教授 (70373074)
安間 了 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 講師 (70311595)
丸岡 照幸 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 准教授 (80400646)
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Keywords | パタゴニア / 完新世 / 古環境 / 北パタゴニア氷原 / 氷河変動 / ペリート・モレーノ氷河 |
Research Abstract |
南パタゴニア氷原のペリート・モレーノ氷河は湖に末端があるカービング氷河で、末端から5km上流の氷河中央では、岩盤高度が水面下約350mと推定されている。この氷河で2008年12月-2009年1月に、氷河上に設置したGPSにより氷河流動観測した結果、流動速度が氷河末端での気温と良い相関を示した。つまり、気温が高く氷河の融解が進んだ時に速く、気温が低い時は遅くなることが示された。このことは、融解水の流入による底面水圧の上昇が底面滑りを促進していることを示すと共に、氷河の底面水圧が湖水によって常に高く保たれているため、水圧のわずかな変化が大きな流動変化をもたらしていることを示唆する。この仮説を実証するために、今年度は全力を挙げてペリート・モレーノ氷河で熱水ドリルによるボーリングを行い、氷河底面の水圧測定とGPSによる氷河流動観測を行った。 概要は以下の通りである。ボーリング地点は氷河末端から約5km上流の地点、(S50°29'24.4"W73°02'37.9")で、岩盤まで深さ510m、直径約15cmの掘削孔を2本設け、水圧センサー(Geokon 4500SおよびHOBO U20)を設置した。水圧は10分間隔で計測しデータロガーに記録した。側壁に近いところからボーリング地点まで3ヵ所にGPSを設置し、その変位を一時間周期で計測・記録し流動速度を求めた。その結果、(1)底面水圧が氷の上載荷重に非常に近く(90%以上)保たれていること、および(2)水圧のわずかな変動(約2%)が顕著な流動速度変化(約20%以上)を引き起こしていることが明らかになった。この結果は、「温暖化による融解量増加が氷河の加速につながる」ことを示すと共に、「融解と流動の増加に起因する氷厚減少によって底面水圧が上載荷重に近づき、さらなる流動速度上昇をもたらす正のフィードバック機構」の存在を示唆する。ペリート・モレーノ氷河の変動メカニズムの解明、これからの変動予測、さらにはカービング氷河の変動予測を行うための貴重なデータが収集できた。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article]2010
Author(s)
安仁屋政武(分担執筆)
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Journal Title
極圏・雪氷圏と地球環境(パタゴニアにおける氷河の消長)(二宮書店)
Pages: 254(106-127)
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[Journal Article]2009
Author(s)
青木賢人(共編・分担執筆)
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Journal Title
温暖化と自然災害-世界の6つの現場から(南米パタゴニアにみる氷河の融解・縮小-地球温暖化による自然災害と社会への影響-)(古今書院)
Pages: 155(85-108)
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