Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 和夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (70142015)
酒井 啓子 東京外国語大学, 大学院地域文化研究科, 教授 (40401442)
黒木 英充 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20195580)
中田 考 同志社大学, 神学部, 教授 (40274146)
山岸 智子 明治大学, 政治経済学部, 准教授 (50272480)
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Research Abstract |
本研究は,多くのムスリムの同胞意識を高める一方で,彼らの一部を自発的な武装闘争(テロ)にも駆り立ててきた/いる,ほとんど唯一の要因である「イスラームフォビア(ムスリムへの迫害・攻撃)」意識の広範な浸透の実態とその要因について,また「イスラームフォビア」として認識される事例は何か,を地域毎の現地調査を通じて明らかにすることを目的としている。この目的を達するため,本年度はEU諸国在住ムスリムを重点調査対象とし,イギリス,フランス,スペインの三国でムスリム諸団体や個人に対するインタビューと出版物の収集・分析を行った。また,平成18年6月にカナダ・トロントで地元出身のムスリム青年グループによる反政府テロ計画が摘発された際,欧米諸国では初めて,カナダ当局がこれら青年とアルカーイダとの接触を明確に否定し,アルカーイダ思想(ムスリムは攻撃されており,自衛のためにジハード=テロが必要であると説く)に共鳴した青年たちが自発的に計画したテロであると発表したのを受け,カナダでも緊急現地調査を実施している。こうした調査の結果,明らかになったのは,イギリス・フランスに比してスペイン・カナダに住むムスリムは一般に,自国内で差別・迫害されている意識は薄いものの,アメリカのイラク占領,イスラエルのパレスチナ占領を「イスラームフォビア」と認識している点では変わりがなく,昨夏のイスラエルによるレバノン攻撃を経て「イスラームフォビア」意識はいよいよ深く浸透しつつあるという事実であった。このほか,本研究では4年の研究期間内で「イスラームフォビア」意識の浸透度を定点観測し,浸透度が変化する原因をも明らかにしたいと考えているため,エジプト・シリア・カタルでも初年度から現地調査を実施した。これら諸国にあってもイスラエルによるレバノン攻撃の影響は顕著であり,「イスラームフォビア」意識は以前より明らかに強くなっている。
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