Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 和夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (70142015)
酒井 啓子 東京外国語大学, 大学院・地域文化研究科, 教授 (40401442)
黒木 英充 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20195580)
中田 考 同志社大学, 神学部, 教授 (40274146)
山岸 智子 明治大学, 政治経済学部, 准教授 (50272480)
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Research Abstract |
本研究は,多くのムスリムの同胞意識を高める一方で,彼らの一部を目発的な武装闘争(テロ)にも駆り立ててきた/いる,ほとんど唯一の要因である「イスラームフォビア(ムスリムへの迫害・攻撃)」意識の広範な浸透の実態とその要因について,また「イスラームフォビア」として認識される具体的な事例は何か,を地域毎の現地調査を通じて明らかにすることを目的としている。この目的を達するため,本年度は中東地域を重点調査対象とし,ヨルダン,イエメン,バーレーン,レバノン,イラン,トルコの六か国でムスリム諸団体や個人に対するインタビューと出版物の収集・分析を行った。また,その他の国々のムスリムについても文献調査あるいは自費による現地調査を実施している。こうした調査の結果明らかになったのは,国によって差はあるものの,一般に中東に住むスンナ派の多くがアルカーイダ思想(ムスリムは攻撃されており,自衛のためにジハード=テロが必要であると説く)に通じる強いイスラームフォビア意識を抱いており,それゆえアルカーイダを含むジハード団体をテロリストというよりはレジスタンスと見ていること,また2006年夏のイスラエル軍によるレバノン攻撃を経てシーア派の「イスラームフォビア」意識が深まるなかで,対イスラエル戦の主体となったヒズブッラーがシーア派全体のなかでも突出した人気を博しつつある事実であった。このほか,本研究では4年の研究期間内で「イスラームフォビア」意識の浸透度を定点観測し,浸透度が変化する原因をも明らかにしたいと考えているため,初年度重点調査の結果,ヨーロッパのなかで相対的にイスラームフォビア意識が強いことが判明した英仏在住ムスリムに対する現地調査も継続した。加えて,来年度の重点調査対象となるマレーシアでも予備調査を実施している。これら諸国にあっても,「イスラームフォビア」意識が弱まる兆しはまったく見られない。
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