Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥羽 陽 金沢大学, 自然科学研究科, 講師 (50313680)
亀田 貴之 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (50398426)
唐 寧 金沢大学, 自然科学研究科, 教務職員 (90372490)
田村 憲治 (独)国立環境研究所, 環境健康研究領域疫学・国際保健研究室, 主任研究員 (10179898)
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Research Abstract |
石川県輪島市郊外(旧国設酸性雨観測所)で過去2年間にわたってハイボリュームエアーサンプラーで1週間毎の大気浮遊粉じんを継続捕集した。捕集フィルターの化学的分析及び気象学的解析から次の結果が得られた。(1)捕集フィルターの重量を測定したところ,大気中の粉じん濃度は冬〜春に高い傾向があり,輪島で黄砂が観測された時期を含む,特に3〜5月に,上昇していた。(2)同じ捕集フィルター試料に著者らが開発したHPLC-蛍光/化学発光検出法を用いる超高感度一斉分析法を適用して4〜6環の多環芳香族炭化水素(PAH)を定量した結果,PAH濃度は中国で大量の石炭が消費される暖房期(10月中旬〜4月中旬)にのみ高く,その組成は我が国の金沢市より中国東北地方の瀋陽市の大気に近似していた。(3)中国東北地方の都市(瀋陽,鉄嶺,撫順)とわが国の都市(金沢,札幌,東京)の大気中のPAHは,浮遊粉じん中のPAH組成分析結果から,中国の都市では石炭燃焼によって放出された粉じんが,わが国の都市ではディーゼル車から排出された粉じんが,それぞれ主要排出源であることがわかった。(4)後方流跡線解析法を適用して捕集した各週の空気塊の軌跡を調べたところ,PAH濃度のみが高かった時期の空気塊は,いずれも中国東北地方を経由していること,PAH濃度と粉じん濃度が高かった時期の空気塊は,中国東北地方の他に黄砂の発生地の一つといわれる黄土高原付近を経由していることが明らかになった。以上の結果から,中国東北地方の都市で冬季に石炭燃焼にともなって大量に大気中に放出されたPAHの一部は,日本海をわたってわが国まで長距離輸送されていることが初めて明らかになった。
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