Research Abstract |
本年度は,昨年度に得られた理論的成果をさらに発展させるだけでなく,具体的な問題に適用し,一定の成果を収めた。その詳細は次の通りである。 信号空間の距離構造をRiemann多様体の計量テンソルによって与えるMahalanobis計量に関して,2次元の場合に,Newton-Raphsonによりその解となる計量テンソルを安定に求めることを可能にした。そして,密度関数の推定誤差がMahalanobis計量方程式の解に与える影響を調べた。また,信号空間の構造をより柔軟に構成するために,カーネル法を拡張し,2つの異なる非線型関数の内積によって与えられるカーネル関数に基づく非対称カーネル理論に関して,複数のカーネル関数を組み合わせ,目的とする構造により近い構造を実現する研究を行った。さらに,信号空間の構造が変化していく場合に,共変量シフトとパターン空間の幾何的構造に着目した新しい学習法を開発した。そして,それらの一連の手法を脳波データ解析とロボット制御に適用し,実用的な精度が得られることを予備実験を通じて確認した。また,微分幾何学を使った信号空間の構造の推定に関して,Lie群上で最適化する学習機械が複数存在し,それらが異なる解に収束した場合,Lie群上で「線形結合」を行うことによって,最適解により近い解を構成する方法を明らかにした。また,雑音が大きい多チャンネル信号からの目的とする信号の抽出に関して,信号の共分散構造を使い,交互最小2乗法と信号対雑音比最大化基準による加重平均法を組み合わせたブラインド信号抽出法を開発した。そして,この技術を応用することによって,脳波計からより精度の高い脳信号を抽出することを可能にした。
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