Research Abstract |
本年度は,信号空間の構造に基づいた学習理論の構築とその応用に関して,前年度までに得た成果を発展させると共に,最終年度として研究をまとめ,残された課題を洗い出した。 その中で,信号空間の構造を求めるマハラノビス計量を標本点から求めるための確率密度関数の推定法を開発した。確率密度関数の対数値の3階微分を正則化項として導入することにより,確率密度関数を求めることを可能にした。また,部分空間サポートベクトルマシンやカーネルウィーナーフィルタをパターン認識に適用し,認識実験において良好な結果を得た。信号空間の構造が変化する場合の学習法に関して,共変量シフトとパターン空間の幾何的構造を用いる学習法の性質を調べ,信号空間の構造の変化に適応できる効率的なアルゴリズムを開発した。そして,脳波データ解析およびロボット制御シミュレーションにおいて,その有効性を確認した。また,多様体構造をもつ信号の学習法に関して,前年度までの直交群上での最適化アルゴリズムを拡張し,リーマン多様体上の元に対する「平均」演算手法を開発し,その収束性について理論的証明を与えた.これによって,コミティ機械のようなアンサンブル学習を,学習パラメータが多様体上で動く場合に適用することが可能となった。さらに,前年度までに開発した信号抽出手法を拡張し,時空間混合モデルのパラメータを推定するアルゴリズムを新たに開発した.そして,推定されたパラメータから求められる時空間逆フィルタにより,原信号を抽出するブラインド信号抽出法を開発した。 この研究を発展させるために取り組むべき課題が,マハラノビス計量の時空間信号への応用,構造が変化する場合の確率密度関数比の推定,複雑な構造をした多様体へ適用するためのコミッティ機械の改良,脳信号の非線形構造に基づく特徴抽出・次元削減法を開発であることを明かにした。
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