2006 Fiscal Year Annual Research Report
快い匂い情報が感性の脳活動に及ぼす本能的影響とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
18300071
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
久野 節二 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 教授 (70136216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 敏正 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 教授 (00261793)
野上 晴雄 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (30119838)
首藤 文洋 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 講師 (10326837)
大島 直樹 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 準研究員 (50375466)
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Keywords | 匂い情報 / 脳(前頭葉)活動 / 神経生理指標 / 光トポグラフィ計測 / 嗅覚 / 心拍変動 / アンケート調査 / 本能 |
Research Abstract |
<ヒト対象実験>筑波大学研究倫理委員会承認のプロトコルで、以下の実験を行った。匂い物質を入れたチェンバーに一定流速で通した空気をチューブで被験者(5名)の鼻部の防塵マスク内へ導入する方式で、(1)新鮮空気(2分)、(2)匂い物質1(2分)、(3)新鮮空気による装置洗浄(2分)と匂いの印象アンケート調査1(質問紙)、(4)匂い物質2(2分)、(5)匂いの印象アンケート調査2(2分)の順で実験を行った。2名にはヒノキを、3名には柑橘系を先に提示した。また(1)、(2)及び(3)では、アイマスク装着とヘッドフォンでホワイトノイズを聞かせ視覚と聴覚受容の影響を遮断した。この間、光トポグラフィーによる前頭葉脳活動とポリグラフ(皮膚コンダクタンス、心拍数、呼吸数)で自律神経活動を記録し、計測値の加算平均を算出した。印象アンケート項目は講座心理学を参考に選定した。ヒノキの匂いで酸素化ヘモグロビン量が右前頭葉で提示30秒後に最高値を示して増加したが、左前頭葉には特に変化は認められなかった。心拍数はヒノキの匂い提示1分後に有意に低下した。以上の効果は柑橘系の匂い提示では観察されなかった。 <動物実験>ストレス応答に対するヒノキの匂いの効果を調べるために以下の実験を行った。筒詰め拘束ストレス負荷状態のマウスに匂いを30分提示後、ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンと各代謝産物量の高速液体クロマトグラフィー計測と血中コルチコステロン量を測定した。対照群(ストレス負荷で匂い提示なし)と比較して大脳基底核のドーパミン量が匂い提示により増加傾向を示した。また、拘束ストレス負荷30分後の血中コルチコステロン量が匂い提示で減少傾向を示した。以上の結果は、ヒノキの匂いがヒト右前頭葉活動を高めることを示唆しており、動物実験の結果からヒノキの匂い効果と報酬系ドーパミンニューロン活動との関連が考えられる。
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