Research Abstract |
今年度は周期発火状態にある動的素子のネットワークに関して、一般的性質を研究した.周期発火しているニューロンの力学系は,位相振動子モデルで本質的に記述できることが知られている.問題は,結合の変化規則であるが,前後の2ニューロンの位相差にのみに依存するルールを考える.これは,絶対的な時間ではなく,相対的な時間差が物理的に意味があることの反映である.学習ルールや結合の形に依存して,最終状態はどの様な動的振る舞いが生じるか,系統的に調べておけば,個別的に調べられた今までの知見を見直し,今後の研究にも重要な指針を与えることができる.興味深いことに,学習関数の形に応じて3つの典型的な状態が構造安定なものとして出現することがわかった.学習ルールがHebb的,すなわち近い位相のニューロンの結合は正の方向へ強化し,異なる位相のニューロンの結合は負の方向へ強めるルールにすると,最終的に2クラスター状態に分かれる.2グループのニューロンの比は初期条件などに応じて色々な値を取り得る.学習ルールが非対称STDP的,すなわち位相差の符号に学習ルールが依存する場合,最終的にニューロン間の発火順序を保持するコヒーレントな定常状態に落ち着く.学習ルールは反Hebb的なルールの場合,いつまでたっても定常状態に収束せず,カオス状態となる.上の3つの状態において,相互情報量を用いた解析をおこなうと,コヒーレントな状態が一番情報量が多く,次に2クラスター状態であり,ほぼゼロに近いカオス状態となる.ここから,Hebb的な学習ルールは2値記憶と同等の連想記憶能力があり,STDP的な学習ルールは色々なタイミングや時間的シーケンスが記憶可能であることが判明した.
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