2008 Fiscal Year Annual Research Report
「昭和20年8月15日」植民地支配終焉と朝鮮解放の歴史像再構築-民衆史の視点から
Project/Area Number |
18310163
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松原 孝俊 Kyushu University, 韓国研究センター, 教授 (20150378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 継雄 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (00134180)
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Keywords | 植民地空間 / 約80万名の引揚者 / 米軍政 / 解放 / オーラルヒストリー / 在朝日本人 / 帝国日本 / 国民国家 |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの関心は、二つある。その一つは「『敗戦国』ニッポンに帰りたくなかった日本人」にあり、もう一つは「帝国日本が崩壊した直後の、米軍政庁による統治が始まるまでの『真空』地帯となった時期の朝鮮半島の歴史的考察」にある。一見して、この二つのテーマは無関係のように思えるが、帝国日本の周辺部において、国民国家「日本」は一枚岩であっただろうかという疑問の上に提出された。 本研究の結論として、第1に、「在朝内地人」という作業仮説を提出し、「内地」の日本人とは異なるタイプの「外地」型日本人が出現していたと論じた。帝国日本の周辺には、単一民族で構成される「内地」とは別な空間である、多民族で構成される「外地」空間が成立していただけに、日本民族以外の民族との共存は当然であった。むしろ単一民族の中で生活すること自体が不自然であると認識されていたと言えよう。加えて郷土愛が芽生え、財産権も生じ、生存する基盤を有していただけに、多民族・多文化社会の中に身を置くことは、彼ら在留邦人にとって嫌悪ではなかった。 第2の問題に関しては、1945年8月15日以降の、 1,短期間に於ける市中への現金の流入--戦後インフレ 2,朝鮮総督府による政治的秩序維持はいつまで続いたか? の2点を取り上げて考察を加えた。つまり政治的メカニズムが作用し、いかなる社会的秩序が崩壊し、いかなる金融システムが機能不全に陥り、いかにして警察権・裁判権が移譲されていったかなどを、引揚者らに対するオールヒストリー調査を活用して、文字資料に顕在化しない事実の解明に努め、所期の目的を十分に達成した。
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Research Products
(3 results)