2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藏田 伸雄 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (50303714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊勢田 哲治 京都大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (80324367)
松王 政浩 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (60333499)
金光 秀和 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (50398989)
石原 孝二 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (30291991)
調 麻佐志 東京農工大学, 大学教育センター, 准教授 (00273061)
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Keywords | リスク論 / 科学技術倫理 / 社会的合理性 / 参加型テクノロジーアセスメント / 予防原則 / 社会的意思決定 / 専門職倫理 |
Research Abstract |
本研究の意義は、不確定なリスクを伴う状態における社会的な意思決定の問題を哲学・倫理学・政治哲学・専門職倫理・科学技術社会論の中に具体的に位置付けたことにある。 本年度は特に市民参加型テクノロジーアセスメントを軸に、社会的合理性の概念を再検討した。具体的にはどのようにして、非専門家の観点をリスクに関する社会的意思決定過程に導入するのかを検討した。リスクに関する市民の反応は非合理的であると言われることもあるが、市民の反応には種々の科学・経済外の合理的な要素が含まれている。こういった要素をリスク評価に導入するためには参加型の意思決定の手法、さらには熟議民主主義的な意思決定過程が不可欠である。本研究では特に、遺伝子組換え農作物の問題に関する検討を通じて、社会的合理性の実現のために適切な意思決定モデルについて検討を試みた。特に遺伝子組換え農作物の屋外栽培に関する北海道の条例制定をケースとして、そこにおけるインフォーマルな意思決定の機能に着目し、熟議民主主義的な社会的意思決定の枠組みを提示することを試みた。その研究成果はオランダで開催された国際学会(EASST)において発表された。 さらに本研究では「予防原則」に関する科学哲学的な分析も行った。社会的合理性について考えるために予防原則を「弱い予防原則」の観点から具体的に理解し、その合理性を明らかにするというアプローチについて検討した。さらに本年度は重大事故とリスクとの関連についての分析(具体的にはJR西日本事故)も行った。またカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のDanielson氏がウェブ上で行っているバイオテクノロジーに関する意識調査のサイトの翻訳を行い、その日本語版を作成した。さらにリスクと専門職倫理との関わりを扱い、技術職の専門職倫理以外に、非専門家にも意思決定への「参加義務」があり、技術者と非専門家の協働が必要になることを明らかにした。
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Research Products
(12 results)