2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18320032
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 浩司 Osaka University, 文学研究科, 助教 (50263182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊達 立晶 同志社大学, 文学部, 准教授 (30411052)
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Keywords | 弁論術 / レトリック / 古代ローマ / キケロ / クインティリアヌス / 『弁論家の教育』 / 修辞学 |
Research Abstract |
本年度に実施した研究成果は、第一に、クインティリアヌス『弁論家の教育』全12巻中第3巻から第5巻までを初めて邦訳し、刊行したこと(クインティリアヌス『弁論家の教育2』京都大学学術出版会、2009年2月20日)が挙げられる。クインティリアヌス『弁論家の教育』は、弁論術理論としてはいうまでもなく、教育理論としても芸術理論としても重要な著作であるが、これまで部分訳(第1巻と第2巻と第12巻)しかなく、また日本では研究もされてこなかった。今回の初訳により、クインティリアヌスの弁論術理論の一端が日本の読者に提供されることとなり、その意義はきわめて大きい。第二に、今年度も年2回の研究会(通称「弁論術研究会」)を開催し、古代ギリシアの言語観について(特にプラトン、アリストテレス、ロンギノスの言語観について)、および現代におけるレトリック研究の可能性について研究をおこなった。プラトンにおいては話し言葉と書き言葉についての意識の違いが見られないが、アリストテレスにおいて徐々に話し言葉と書き言葉が分離することがわかった。また古代ギリシアのヘレニズム期の修辞学書であるロンギノス『崇高論』においては、ストア派の言語観の影響、アジア主義とアッティカ主義との抗争など当時の言語観の影響などがあることがわかった。さらに、現代におけるレトリックの可能性については、ヤコブソン理論の誤解の上に現代レトリック論が展開されている現状が明らかになり、転義法の観点からあらためてヤコブソン理論を問い直すべきだという意見にまとまった。
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Research Products
(5 results)