2006 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代における<書画情報>の総合的研究II--『古画備考』を中心に--
Project/Area Number |
18320033
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Research Institution | Musashino Art University |
Principal Investigator |
玉蟲 敏子 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (10339541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相澤 正彦 成城大学, 文芸学部, 教授 (10159262)
大久保 純一 人間文化研究機構国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教授 (90176842)
田島 達也 京都市立芸術大学, 美術学部, 講師 (40291992)
並木 誠士 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (50211446)
黒田 泰三 財団法人出光美術館, 学芸課, 課長 (60392883)
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Keywords | 古画備考 / 書画 / 江戸時代 / 情報 / 江戸 / 古画趣味 / 美術史 / 備忘録 |
Research Abstract |
本研究は、代表者1名、分担者5名、協力者6名の合計12名から成る研究組織で推進しており、平成18年度は、全員出席の定例研究会を2回(そのうち1回はシンポジウム)、定例見学会を2回、臨時見学会を1回実施した。 定例研究会の活動は、シンポジウム「狩野家絵師の多様な仕事」(於平成18年10月21日、武蔵野美術大学)の開催に集約される。これは武蔵野美術大学美術資料図書館展示室で公開された「御用絵師の仕事と紀伊狩野家展」の併催行事にも位置づけられ、研究会メンバーのうち狩野家を担当する並木誠士、五十嵐公一、野口剛を軸に、円山派の田島達也、光悦流の玉蟲敏子が相対的な視点をもって発表した。全体討議においてはメンバー外から安村敏信氏(板橋区立美術館)も加わり、16世紀から19世紀前半までの広いスパンにわたる狩野家絵師の活動の多彩さとその特質について議論した。学内のみならず、学外の研究者・学生が多く集まり、参加者100名に迫る数に達した。発表の成果は第II期の終了後に刊行が予定される研究論文集で公表されることになるだろう。 定例見学会は東京・池上本門寺に所在する狩野家墓所および出土品の見学を実施した。墓石の裏面や筆塚に刻された銘文は『古画備考』に所載されるそれぞれの狩野家画人の根本資料(原典)であり、その現状確認は本研究の基礎として重要な意義をもっている。また、研究代表者は次年度以降の調査の先導を兼ねて、アメリカ東海岸の主要美術館・図書館が所蔵する江戸狩野家関係資料の調査旅行を実施した。とくにボストン美術館所蔵の狩野伊川院・晴川院関係作品は『古画備考』の成立前後の江戸の官画界の書画観を窺う上で注目される資料であり、当地にはほかにフェノロサが書画の研究法を木挽町狩野家から学ぶに際して、『古画備考』を参照したことを証明する資料も残されている。これらの調査の成果はさらなる検討を踏まえた上で、次年度以降、発表する予定である。 本研究は、同題目研究の第II期に位置づけられており、第I期から引き続いて本文の校合作業、言及作品の調査・確認を行っている。後者はなかなか遅々として進まないが、第I期の報告書のデータベース編として作成した「『古画備考』原本引用書画・資料一覧(未定稿)」を、第II期の調査を簡便に進めるための基礎資料として主要な機関や研究者に配布しており、近い将来必ずや有益な所在情報が寄せられるものと確信する。ちなみに今回の海外調査に際してもニューヨークの古美術商から、本書増訂本に所載される梅軒筆「水墨観音図」の照会があり、国内のみならず海外コレクションも視野に入れる必要性がひしひしと感じられた。いっぽう、前者の校合作業はそれぞれの分担者・協力者の裁量で進められているが、本年度は活字本の底本である東京国立博物館所蔵の『古画備考』写本のカラーマイクロフィルムの撮影を実施し、いよいよ作業に必要なインフラの整備が完了しつつある。
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Research Products
(17 results)