Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相澤 正彦 成城大学, 文芸学部, 教授 (10159262)
大久保 純一 人間文化研究機構, 国立歴史民俗博物館・研究部, 准教授 (90176842)
田島 達也 京都市立芸術大学, 美術学部, 講師 (40291992)
並木 誠士 京都工芸繊維大学, 大学院・工芸科学研究科, 教授 (50211446)
黒田 泰三 (財)出光美術館, 学芸課, 課長 (60392883)
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Research Abstract |
本研究は,代表者1名,分担者5名,協力者6名の合計12名から成る研究組織で推進しており,平成19年度は,全員出席の定例研究会を2回,定例見学会を2回,臨時見学会を1回実施した。第一回研究会は,美術史学会東支部例会の研究発表と兼ねて開催し,発表者の研究代表者が前年度調査した狩野伊川院・晴川院筆「和漢流書画巻」(ボストン美術館)およびフェノロサ手稿「印譜集」(仮称,ハーヴァード大学燕京図書館)について,『古画備考』と緊密な接点のある作品および資料であることを口頭で示した。とくに後者は,原本から失われた巻20の原本の復元に役立つ資料であることが確認され,より踏み込んだ研究は,担当メンバーによって今年度深められていくことだろう。 定例見学会は二回とも,"昭和の古画備考"として知られる美術史家田中一松氏の残した厖大な備忘録の調査を行った。大正時代末から昭和にかけて活躍した田中一松氏は,国の文化財保護審議会や東京国立文化財研究所などの要職を歴任し,日本の美術史のあらゆるジャンル・時代に通暁した巨人である。この資料は主に調査時のメモや最初に学術雑誌に投稿した解説や論文の自筆原稿から成るもので,画家の印譜や署名の記録のみならず,時に達者な縮図をも交え,まさに『古画備考』の研究・記述方式が近代に成立した美術史学においても作品調査の際の基礎となっていることが分かるのである。江戸後期に起こった古画古物趣味の幕府アカデミズムからの総括といえる本書の価値が明確になったといえるだろう。本研究は,同題目研究の第II期に位置づけられており,第I期から引き続いて本文の校合作業,言及作品の調査・確認を行っている。後者はなかなか遅々として進まないが,前者の校合作業については原本の本文を中心に進めることが改めて確認され,前年度に撮影した活字本の底本である東京国立博物館所蔵の『古画備考』写本のカラーマイクロフィルムを校合作業に容易いようにディジタル処理したことも本年度のインフラの整備事業として特筆されるものである。次年度は第I期,第II期合わせて6年間に掛かる同題目研究の目の最終年度であり,研究会メンバーによる論考の準備や総纏めの作業が執り行われていく予定である。
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