2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ近・現代文学における〈否定性〉の契機とその働き
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18320050
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小黒 康正 Kyushu University, 大学院・人文科学研究院, 准教授 (10294852)
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Keywords | ドイツ文学 / 否定性 / ベンヤミン / ジャン・パウル / ホーフマンスタール / ムージル / バッハマン / 黙示録 |
Research Abstract |
平成21年度は、当初の研究計画に基づき、9月19日から21日までの間に九州大学文学で行った第七回科研研究会にて、これまでの研究成果を踏まえた総括を行った。発表担当者と発表題目は以下のとおりである。 (1) 小川さくえ(連携研究者):インゲボルク・バッハマンにおける「語る主体」とジェンダー (2) 小黒康正(研究代表者):「水の女」の黙示録-バッハマン『ウンディーネ行く』を中心に (3) 恒吉法海(連携研究者):薄明とジャン・パウル (4) 安徳万貴子(研究協力者):ホーフマンスタールのオペラ『影のない女』を統べる声なきものの声 (5) 武田利勝(研究協力者):狩猟者の悦楽、あるいは自己喪失-ホガースとヴィンケルマンにおける彫像観察について (6) 岡本和子(連携研究者):ベンヤミンと子供の本 (7) 時田郁子(研究協力者):ムージル文学における群衆 (8) 小黒康正(研究代表者):本研究の総括 以上の研究発表に基づく合同討議では、(1)「否定性」の概念を神学・哲学・現代思想における問題から文学の問題へと還元し[上記(1)、(2)、(5)、(6)]、(2)ドイツ文学における「否定性」の働きを通時的視点から総括し直し[上記(3)、(4)、(7)]、(3)その上で「否定性の詩学」の為の理論的基盤の構築を図った[上記(8)]。 反省点は、「否定性」の捉え方、並びに「否定性」と「否定」の区別が各研究者によって微妙に異なり、統一的な概念構築に至らなかったことである。しかし、「否定性」をあえて一元化しなかったが故に、逆に、「否定性の詩学」の多様性を生産的に明らかにすることができ、文学研究における新たな観点を提示できるに至った。
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Research Products
(23 results)